【第318話】お客様が唸る“提案書”の絶対要件
「短期間に提案をご準備いただき、ありがとうございます。ホント、××社さんに、これを見せたいくらいです」と、お客様からお褒めのコメントが飛び出します。
渾身の新製品についてお問合せいただき、提案書を持参し、お打合せさせていただいた時のことです。
法人間の新規の取引開始にあたって、消費者個人への販売とは異なり、すぐにその場で「はい、買います」とはなりません。
まずは窓口となる担当部署が判断し、しかるべき関係部署との調整などを経て、仕様や予算を算段した上で、権限者の稟議を通さなければならない…といった一連の手続きがあるからです。
そのため、まずはお問合せがあって、「こういった状況に対して提案して欲しい」というご依頼から、双方の準備が整ってお打合せ…といった流れになります。
このお打合せの肝は「提案する」ということなのですが、実はこの“提案”というのが曲者で、多くの企業、はたまたその道のプロと思われている営業さんでも間違います。
では、どのように間違うのか…といえば、提案らしい「いかがでしょうか?」にも色々あるということです。
これはある意味、提案のつもりで「いかがでしょうか?」と言ったところで、その実、提案になっていない場合があるということです。
例えば、「当社は、当社の製品は…、いかかでしょうか?」という文脈は、提案になっていないのです。
というのも、この営業スタイルは、一種の押し売り、お願い営業であって、この「いかがでしょうか?」は、お客様にはどう聞こえているか…ということを考えてみていただきたいのです。
実に単純なことですが、この「いかがでしょうか?」は「何とかこれで手を打ってくれませんか?」と言っているに等しいということです。
もちろん、商談の場というのは、双方の意向の調整の場でもありますから、こういった歩み寄りのポイント、いわば妥協点を探るということは大切なことです。
ただし、あなたが提案と思っていることは、提案になっていないとお伝えしています。
こういった商談にける提案とは、お客様に「こうされてはいかがですか?」という道筋をご提案するということです。
つまり、提案の本質は、製品を売ること自体にあるのではなくて、お客様により優れた判断をしていただくための材料を提供するというスタンスにあり、その結果、製品の購入につながるという時系列にあります。
そうであると分かれば、提案とは「このように対応されては、いかがでしょうか?」ということ。つまり、主語がお客様になっていることが優れた提案の肝なのです。
大切なことなので、もう少し補足すれば、提案とは御社の技術・製品を、お客様の立場に転換してお伝えしなければならないということです。
よって、お打合せでは、その提案の肝が提案書のタイトルになっていなければなりません。
そして、提案書は、その肝から始まり、そのために自社製品がその実現の手段としてどのように優れているのかと続きます。
最初に、まずは弊社の会社概要、自己紹介から…などというのは今、説明しても仕方ないことです。自社がどんな会社か…は、お客様が製品を欲しいと思っていただいた後の話なのですから、提案書の最後に付いていればよい話です。
情報があふれる今の時代において、お客様に目を止めていただくためには、こちらの情報を発信するのではなく、それをお客様の側に転換したものでなければならないのです。
資料の分厚さよりも、肝となる提案タイトル、渾身の一行を考えることが大切です。
御社の提案はお客様側に転換されて肝化していますか?
その肝は提案タイトルになっていますか?