【第254話】新事業の高収益化に欠かせない選択意識

「また、そこに戻ってしまってないか…」。とある新事業立ち上げプロジェクトを推めていく中でアイデアが煮詰まりかけた際にリーダーから出た一言です。

 

ここでいう「そこに…」とは、流通発想のことです。実は、この状況、多くの新事業立ち上げプロジェクトで起こることです。

 

もう少し補足しますと、ビジネスには大きく見て「作る」ビジネスと「売る」ビジネスがあります。「作る」ビジネスはいわゆる製造発想、「売る」ビジネスは流通発想です。

 

これらはビジネスの類型であると同時に、企業の2大機能でもあります。「作る」ビジネスであっても「売る」機能が必要ですし、「売る」ビジネスであっても、例えばお客様に合わせてアレンジするといったことで「作る」要素が欠かせません。

 

いわゆるサービス業も同様です。サービスメニューを「作る」ことが必要ですし、それを「売る」ための店舗や販促が欠かせません。

 

なぜこんなことをお伝えしているかといえば、事業を構築する上で知っておかなければならない大切なことがあるからです。

 

それは、「作る」と「売る」の「収益構造」の違いです。実は、“売上”の拡大と“利益”の拡大は、似て非なることです。付加価値の源泉が違うからです。

 

教科書的な損益分岐点分析で考えるならば、売上が増えるとそれに伴って利益も増える…といったことが説明されます。

 

当然のことながら、それができればそうなる…ということです。現実には、値引きしたり広告費を増やしながら売上を拡大して、収益性が落ちて赤字転落といったことが起こります。

 

ちょっと考えれば分かることですが、「作る」ビジネスというのは、転換による“粗利”ビジネスです。一方、「売る」ビジネスというのは移転による“手数料”ビジネスです。

 

このため、「作る」ビジネスの収益性には創意工夫、価値を付加することによる粗利拡大の可能性が高いのに対して、「売る」ビジネスの収益性は手数料率という限界があります。

 

そのため、高収益を目指そうとするならば「作る」ビジネスを目指す意識が大切です。前述の新事業立ち上げプロジェクトでも、アイデアに詰まったために、どこからか売れそうな商品・サービスを持ってきてそれを新事業に…、という雰囲気になってしまったところで、リーダーが釘を刺したのです。

 

一方、「売る」ビジネスは、「作る」ビジネスと比べて収益性は相対的に劣りますが、すでにある商品・サービスを「流通」することになるため、売上が早く立ち上がりやすいという面もあります。

 

このため、新事業構築にあたって意識が売上に行ってしまうと、どうしても「売る」ビジネスになりがちです。そして、売上は立ち上がったものの儲からない…という後の祭り、分かるはずだった未来が現実化します。

 

新事業構築にあたっては、売上はもちろんのこと、その先にある利益、粗利をどう創意工夫するかというところに意志を持つことが大切です。

 

ちなみに、業態ビジネスはといえば、業態とは「商品・サービスの提供の仕方」ですから、取扱商品・サービスよりも、その提供の仕方、販売方法に付加価値の力点があるという意味で、「売る」ビジネス、流通発想といえます。

 

また、ビジネスモデルといったことも、それをコピペするだけならば、これまでにもあった商売を「なぞっている」だけですから、ビジネスモデルの流通発想といえるでしょう。

 

いずれにしても、利益とは付加価値から生まれるものです。ですから、それが生まれやすい入口に立つことが大切です。

 

売上規模への関心も分かりますが、経営が投資であり、成長発展が利益の再投資で拡大再生産を歩んでいくことであるならば、利益こそ成長の燃料です。

 

足りてる時代、売れさえすれば儲かる時代ではありません。付加価値、超過利潤を生む御社ならではの「作る」を考えることが大切です。

 

その売上は利益の出る売上ですか?

御社の新事業は「作る」に軸足を置いていますか?

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