【第229話】頑張ってるのに売れなくなる失敗の構造

「いろいろと見直してきたことが、裏目に出ていたかもしれません」と社長。もう一段の販売拡大に向けて必死にもがきながら頑張っておられます。

 

「売れない」ということでお呼びいただいた際、昨今特に共通することがあります。それは「キレイすぎる」という点です。店舗、WEBサイト、パッケージ、パンフレット、チラシ…、こういった制作物がキレイすぎるのです。

 

「キレイに越したことはないでしょう」、「キレイすぎると売れなくなるなんて信じられない」、「ジャケ買いという言葉もある」…といったご意見が聞こえてきそうです。

 

これらは間違いではないのですが、ここでお伝えしたいのはその水準、レベル感のことです。

 

例えば、「美術館に「買おう」と思って行きますか?」ということです。美術品がキレイに陳列されて、背景として作品と作家の名前が掲げられているものの、その作品自体の特徴やウリ、見方といったことは見る人に委ねられます。もちろん、値段は表示されていません。

 

実際、陶器のようなものを販売する店舗で、作家毎にブースがあって、その作家の白黒写真と釜の歴史といったことがポスターセッションのように掲げられ、その前に作品である陶器が並べられ、値段は陶器の裏に張ってあって、手に取ってひっくり返さないと分からない…といった陳列を目にします。

 

こういった販売上の情報発信のスタイルというのは、キレイすぎてお客様が「買う」という極めて人間的な判断行為の範疇を超えてしまっているため、「買おうかな」よりも「見るもの」になってしまい、結果、「勉強になりました」ということでお店を出て行ってしまうのです。もちろん、何も買わずに…。美術館と同じなのです。

 

これは、店舗でも、WEBサイトでも、パンフレットでも、情報発信のすべてに言えることです。キレイ、オシャレ…、そういったことが全く不要とまでは申し上げなくても、少なくても商売、販売という視点で見れば、それよりも大切な「らしさ」があるのです。

 

こういった、キレイすぎる、オシャレすぎる…が横行してしまう原因は、経営者の姿勢によるものです。売ることに対して「腰が引けている」のです。

 

我々は商売人ですから、基本的に「売りたい」のです。しかし、お客様は人間関係での摩擦を避ける傾向が強まっており、売り込まれることを端的に嫌がります。

 

こういった時代背景が強くなるにつれて、売り手も「売ろうとしていませんよ」といったお客様に任せる傾向、委ねる姿勢が強くなってきました。よく言えば「選ばれよう」ということなのですが、これが過ぎるとキレイ、オシャレで選ばれようと、商売の本質部分で選ばれることから外れていってしまうのです。

 

もちろん、無理矢理に売り込もうということではありません。お客様がご購入を決めていただけるのに必要な程度の情報発信をすることは、売り手側の責任だということです。

 

また、こういった“美術館傾向”に拍車をかけているのが、製作物、いわゆるクリエイティブを製作する「デザイナー」という商売です。

 

デザイナーは読んで字のごとくデザインが仕事です。そのため、クリテイティブのデザイン性を上げていこうとします。これが仕事なのですから仕方ありません。しかし、ここで大きな問題は、デザイナーは販売員ではありません。

 

残念ながら売れるクリエイティブを作れるデザイナーというのは極めて希少な存在です。それもそのはずです。デザイナーは、人間的、泥臭い、売る…そういった世界がキライだからデザイナーになっているのです。

 

デザイナーへの誉め言葉は「キレイ」、「オシャレ」、「カッコいい」…であって、「売れた」ではありません。仕事そのものに大きな矛盾があるのです。経営者ならばそういった矛盾を分かった上で仕事を依頼しなければなりません。

 

我々商売人がしなければならない情報発信は、常に「セールストーク」です。見る人に任せる、委ねるといったことでは、仕事を放棄しているに等しいと言わざるを得ません。

 

「セールストークとしてのクリエイティブ」という商売人としての目的意識を保つことが大切です。そのためにも、デザイナー任せを止めて、経営者ご自身で売ることに本腰を入れていくことが大切です。

 

御社の情報発信はセールストークになっていますか?

デザイン任せ、お客様任せになりすぎていませんか?

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