【第134話】「利益は後からついてくる」ための必要条件

「利益は後からついてくる」という考え方は、経営を伸ばしておられる経営者方が共通して大切にしている思考法だと感じます。これは商売繁盛の真理なのでしょう。

 

ところが、これを勘違いして捉えておられる経営者の方も多く、もったいないし、せっかくの成長ポテンシャルを活かされていないことに、悔しい気持ちになることもあります。

 

「先義後利(せんぎこうり)」という考え方は、孟子のいう「義を先んじて、利を後にする」に由来します。つまり、「大切なのは目先の利益よりも道義である」という教えです。

 

もちろん、この教えに意義を唱えようなどというものではなく、この教え自体はしっかりと理解し守っていくべきものと思います。

 

ここで勘違いが起こるのは、「道義」の部分です。

 

この「道義」を、例えば法律を守ったり、しっかり会計処理することや、契約を確実に履行することであったり……と考えていたらどうでしょうか。

 

これは至極当然のことであって、この程度の「道義」を守っていたからといって、いずれ後から利益がもたらされる――などと期待するのは、能天気というものです。

 

また、「道義」は、顧客第一主義とも違います。お客様にしっかりと尽くすことは大切ですが、「お客様は神様です」といった考え方には賛同しかねます。

 

確かにビジネスは、お客様からの入金があって初めて、それまでの努力が現金化されるという構造にある訳ですが、それを成していくためには、仕入先、生産設備メーカー、販売代理店、情報システム開発会社、大屋さん、銀行、株主、近隣の方々……、自社のビジネスを動かしていくことに関わっているすべての方々のご協力への感謝があってしかるべきです。

 

そして、この顧客第一主義は、もっとも大切にすべき従業員の疲弊という大きな副作用をほぼ確実に伴います。そんな副作用を誰が望むでしょうか。

 

では、経営者という立場から「道義」をどのように捉えていけば良いでしょうか。独自の成長発展の道を着実に歩んでいくためには――、と考えれば自ずと見えてくるものがあります。

 

それは、自社は何のために働いているのか、誰のために働きたいか…といった経営者の“意志”です。独自の成長発展には独自の“意志”が絶対に不可欠です。

 

であるからして、後から利益がついてくるようにするための準備として、自分で自社の「道義」を規定することを避けて通れないのは明らかです。

 

そして、我々が取り組んでいるのが、ボランティアではなく、独立独歩の事業経営である以上、何か闇雲な努力であってもそれがいずれ報われる――、などと考えるのも楽天的過ぎです。

 

経営は投資です。投資意識とは、リターンを得る目論見を伴った上で行う努力の先行消費です。このリターンとは、“意志”の実現度です。

 

“意志”がなければ、事業はただの金儲けということになるのは明らかです。自社の“意志”の実現度を語るためには、まず明確な“意志”が欠かせないということなのです。

 

投資にあたって、利益だけを追うか、大いなる“意志”を持って挑戦するか。これこそが「道義」的かどうかを分かつ分水嶺であり、その境目が“意志”の有無なのです。

 

“意志”が大きければ大きいほど、リターンを得るまでに必要な努力も大きくなります。こういった“意志”を伴う努力過程にあって、初めて「後から利益はついてくる」と言えるのです。

 

この際、例え儲かりそうな話があっても、自社の「道義」を外さないということが、結果、自社のお客様を優先し大切にすることでもあります。

 

御社の「道義」は独自のものになっていますか?

投資は儲かりそうなコトよりも“意志”の実現に向けられていますか?

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