【第133話】経営の天地を分かつ「豊かな発想」と「ふざけた発想」の違い
事業を成長発展に導いていくためには、独自の「発想」が欠かせません。ところが、これがそう簡単ではありません。
それもそのはずなのです。事業における「発想」が難しいのは、考えているのが単なる事業アイデアではないということです。
居酒屋で飲みながら「それ面白いね~!」となった翌日、酔いが冷めてみたら「ムリ~」となるのには実は構造的な要因があります。
まず初めに考えておきたいのは、ビジネスにおける「発想」とは、何を発想しようとしているのかということを、ご自身で良く分かっていることが大切です。
では、とても簡単な質問をさせていただきます。
「あなたの周りに今すぐ儲かりそうな事業アイデアはありますか?」
多分、無いでしょう。では、それは探せば見つかるのでしょうか? 探して見つかるのはあくまでもヒントであって、ドンピシャの“答え”というのは見つからないでしょう。
経営環境の分析は状況を把握しておくために必要なのであって、その分析を徹底的に進めたからといって、問題点は減らせても、次代を担うであろう希望あふれる秀逸なビジネスが見えてくるとは限りません。
つまり、経営者にとっての情報収集とは、そのままコピペすれば儲かりそうなネタ探しの旅ではなくて、ご自身のビジネスを構築するためのインスピレーションをかき集めて、独自の答えを創っていくためのものです。
よく、市場創造、顧客創造、需要創造……といったことを耳にします。足りている時代、まさにこういった切り口が求められているのです。
自分なりの切り口で儲かるようにする。つまり、採算を研究開発することこそ、事業を発想することの本質的な意味なのです。ビジネスを構築する――とは採算を考えることに他なりません。
こういった「採算を発想する」という場面において、多くの失敗例には共通点があります。それは、手段レベルの違いを、発想の核に据えてしまっているという点です。
奇抜な店舗、異様なまでに過剰なパッケージ、無用に複雑な油圧機構……。
手段レベルの違いを派手にやった場合、これは、単にふざけているに過ぎません。何か上手いやり方はないか……と、やや甘えを抱えたままで考えてしまっていると、こういった愚策を生むことにつながります。
前述の「酔いが冷めてみたら「ムリ~」」というのは、手段ベースでのアイデアでしかないために、冷静に考えればそれだけでは採算に乗らないということが判明した、というのがその構造的な理由です。
つまるところ、物事の切り口、光の当て方、目の付け所……、考え方を変えていかなければ、どのような「新しい」も、所詮手段レベルだと言わざるを得ません。
考え方のレベルで企画を進めてこそ、ビジネスを成長発展に導く「豊かな発想」と呼ぶに相応しいものなのです。
経営を伸ばす「豊かな発想」とは、ご自身の考え方を新しいものに置き換えることから始まって、採算を確保できるようにするための全体が構想されている状態のことです。
「豊かな発想」の下であれば、一見派手で斬新な手段であっても、それは構想を実現していく上で、重要な役割を担ってくれることになるのです。
「豊かな発想」の経営者は考え方レベルで何をどう変えていくかを構想し、「ふざけた発想」の経営者はどうやるかの手段を探す。
背景にある発想の違いをお客様は感じます。どちらが経営に本物の成長発展をもたらすかは、述べるまでもないでしょう。
御社の事業構想は「豊かな発想」に満ち溢れていますか?
次なる打ち手は考え方の更新を伴っていますか?