【第128話】これから10年生き延びる企業の絶対条件

「卸の中抜き」という話を聞いたことがある経営者の方は多いでしょう。

 

これは、製造業が小売業との直接取引を拡大することで、卸売業を抜いた流通構造の変化を表していました。

 

ところが、これはもう一昔前の話。昨今はもっと話が進んでいます。製造業が卸売業も小売業も抜いて、消費者と直接取引する構造にまで範囲を拡大しています。

 

「そうは問屋が卸さない」ということわざのとおり、商売において問屋・卸売業というのは、流通を握ることでその中心的役割を担うほどの地位にあったことが伺えます。

 

販売機能を担う小売業が、流通革命や価格破壊という名の下、“安売り”に転じた頃から事情は変わり始めました。

 

これまで、製造業の代弁者として商品の良さを説明して売ってきた小売業から、安さ・価格訴求による小売業へと、質的な転換が起こってしまいました。

 

そうなると残念なことに、小売業の販売員は商品知識を持つ必要などなく、「ウチは他社より安いですよ」と一言だけセールストークを覚えれば良いだけになりました。

 

それからというもの、GMS、ディスカウントストア、カテゴリキラー、ホームセンター、100円ショップ……、流通業の新業態はたくさん生まれてきましたが、コンビニエンスストアを除いて、“安売り”を基本路線としています。

 

さらに、消費者保護の強まりから、製造業者が小売業者に販売価格の目安を示す「メーカー希望小売価格」は、再販価格維持行為(独禁法)とみなされ「オープン価格」になり、消費者へ販売する際の「価格付け」は、より一層、小売業の裁量によるところとなり、“安さ”に拍車がかかっていきました。

 

価格が崩れるということは事業が崩れることに等しいと心得ておくべきです。自社で販売することを中心に販売チャネル政策を組み立てれば、大変ではありますが値崩れの懸念からは解放されます。

 

御社が製造業であれば、長期的に考えて、卸売業や小売業に頼っていたならば、例え売れたとしても“安売り”ですから、もう利幅を確保していくことは難しいということです。

 

そういった中、生まれて来たのが「製造小売業」という業態です。製造と小売の両方の機能を持つ業態です。

 

GAPやユニクロといったSPAと呼ばれるアパレルの製造小売業を思い浮かべて頂くとイメージしやすいでしょう。あるいはニトリのように小売業から出発して、今では自社商品を売っている家具屋さんなども製造と小売の両機能を兼ね揃えた事業モデルです。

 

製造業が消費者に直接販売するという“行為”は、ある意味ご法度でした。それは、自社の製品を販売してくれている卸売業や小売業と競合することになってしまうからです。

 

そういった点に配慮しながら進化している特殊な例としては、アイリスオーヤマのような製造と卸売を併せ持つ「メーカーベンダー」という事業モデルも生まれています。

 

説明が長々としてきましたが、要は長期的に見て、御社が製造業ならば販売機能の強化を、御社が小売業ならば製造機能の強化を、という大きな方向性を見据えながら経営を企てていくことが肝心だとお伝えしたいのです。

 

産業分類による製造業、卸売業、小売業といった他人が作った括りに縛られている必要など全くありませんし、これらの下流進出・上流進出は、独立自尊で本業を極めていくことを目指せば、避けては通れない道だということです。

 

取引先とのこれまでの関係に配慮することも大切ですが、いずれ長い目でみれば、「製造」と「販売」の両機能を自社に構築していくことが肝心です。

 

そして、「製造」と「販売」の両機能を一つの事業として結び付けるのが「企画・開発」機能であるということを念頭に人員と資金を予算だてすることが大切です。

 

御社の将来は「製造×販売」になっていますか?

そのための「企画・開発」予算は準備していますか?

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