【第127話】独自の成長発展を手に入れる強みの活かし方

 

「強みを活かす」といった文脈は、経営コンサルタントという仕事をしていると大変良く耳にします。私も売上・利益の拡大、新製品・新サービスの開発、設備投資など、次なる打ち手の展開にあたっては「強みを活かせるか、高めるか」といった視点で考えます。

 

ところが、実際にやるとなると、それほど簡単ではないことが分かります。そもそも自社の強みとは何なのか。その整理の段階ですでに、それは本当に強みなのか――といったことで、議論が止まり、手詰まりになることさえあるほどです。

 

その手詰まり感から、「じゃ、こういった製品、売れそうじゃない?」といった議論へと飛躍し、強みを活かす視点を持たないまま新製品の開発に入ったりするとどうなるでしょうか。お察しのとおり、経るべき手順を経ていないのですから、結果は推して知るべしでしょう。

 

では、強みというのは一体どういったものなのでしょうか?

 

強みとはとても簡単に言ってしまえば「今、在るモノ」のです。人、技術、技能、図面、製品、在庫、生産設備、工場、土地、建物、仕入先、顧客、販売チャネル、実績、信用、理念、思想、企業イメージ、情報システム……、どれもこれも持っているものは強みです。

 

「えっ、他社よりも優れていないと強みとは言えないのでは?」といったご意見が聞こえてきそうですが、そうではありません。

 

強みとはまず今在るモノの全てです。目には見えなかったとしても持っている財産の全てが強みです。その強さは強いに越したことはありませんが、他社と比べてどうかということは実はそれほど重要ではありません。その答えは後ほど。

 

事業の経営というのは、毎日が“不足”との戦いです。そう考えれば、在るだけですごくありがたいことだということがお分かりいただけるでしょう。

 

そして、この強みが次なる打ち手、成長発展の原資になることについても、既にご理解いただけるでしょう。そうです。「無い袖は振れない」のですから、在るモノを起点に何とか考えていくしか道はないのです。

 

強みを活かすという文脈で失敗するのは、強みを一つの“項目”として捉えてしまうことに起因します。

 

強みを一つの項目と捉えてしまうと、その延長線上にしか次の事業は生まれてきません。自ら極めて強い制約を課してしまうため、視野が狭まってしまいます。

 

強みを「今、在るモノ」全てと考えれば、それらをどう組み合わせて、一つの事業を組み立てていくか……という考え方に想いが至るでしょう。そして、足りない部分があれば調達してくればよいことにも頭が巡ります。

 

すなわち、今、在る強みの組み合わせを起点に新事業を考えれば、各々の要素の強さだけではない組み合わせの妙として、新たな強みが出来上がるのではないですか……と申し上げています。

 

つまり、強みの要素のそれぞれが仮に例え他社に負けていたとしても、これまでの経験などを加味して、独自の組み合わせを考えたならば、それは大いに他社に対して優位といえる強みになるのではありませんか、ということです。

 

強みというのは、組み合わせることで独自の強みへと高まり、新たな事業の核を成します。決して一つ一つの要素で競争しているのではありません。この火種となる独自の強み、事業の核があれば、足りないところは外注しても買ってきても良いのです。ただし、核を買ってくるようなことがあっては、独自の成長は望めません。

 

経営者にとって、資源は常に不足します。ですが、今在る強みに目を向け、それを独自の組み合わせに仕上げることで、新たな価値、新たな事業を生み出していくことは可能です。

 

この際、大切なのは、全部の強みを使おうとしないことです。この事業ではココは捨てるという勇気も必要です。

 

事業とは顧客価値を生むこと。そのための工夫努力が売上・利益の源です。決して強みそのもののレベルだけが収益性を決定づけるのではありません。工夫次第――だからこそビジネスはたまらなくエキサイティングなのです。

 

無いモノを妬まず、今在る強みに目を向けていますか?

ビジネスの差は能力の差ではなく工夫の差であることを本当に理解していますか?

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