【第106話】能力上の「強み」を事業上の「優位性」に仕立てるための転換法
高収益を実現している企業は、必ず能力上の「強み」を起点に収益性を向上させています。考えてみれば当然のことですが、「強み」が利益の源泉であることはビジネスの公理です。
資金を投下し事業を拡大させれば売上は増加するでしょうが、利益が増えるとは限りません。投資効率の低い事業に進出すれば全体として収益性は低下してしまいます。
これが「売上は買えるが、利益は買えない」といわれる所以です。
ですから、収益拡大策の展開にあたっては、利益視点、収益性向上の観点から、現行の事業よりも投資効率の高い事業、収益性の高い事業を考えましょう、と常々お伝えしています。
利益率の向上を支配的に司るのはコストダウンではありません。お客様の支払い意欲です。これが超過利潤を生むのです。
では、お客様の支払い意欲を高めるためにはどうしたらよいでしょうか。これはすなわち、お客様の“欲しい”を喚起すると同時に、他社の類似製品・サービスと比べていかに「優位性」を構築するかということです。
「優位性」の源は組織の持つ能力が大きく影響します。残念ながらこれは現実です。
ですが、ご安心ください。この組織の持つ能力という「強み」を、しっかりと事業の「優位性」に転換できている企業はそれほど多くありません。仮に組織能力で多少負けていたとしても、転換次第で勝ち目はあるのです。
組織能力をそのまま売っている場合、基本的に低収益に甘んじることになります。組織能力をそのまま売っている限り、高収益を実現することはできないのです。
その理由は簡単です。お客様から見れば、その会社から買う理由が、欲しいモノではなくて、代わりにやってくれる代行業だからです。
残念ながら多くの経営者がこの落とし穴にはまります。組織能力という「強み」をそのまま売ることが出来てしまうからです。組織能力を事業の「優位性」に転換して売るよりも、その方が思考的に簡単だからです。
個人で例えるならば、TOEIC950点という能力だけをウリにすれば、文献や契約書の翻訳を任されるでしょう。一方、高い英語能力で重要な会議をファシリテートできますというウリにできれば、もっと大きなステージで活躍することができるでしょう。
同じような能力であっても、提案方法の差で、単なる作業人員で終わるか、会社の中核を担うか。。。という程に、歴然としたキャリアの差になっていくことは想像に難くないでしょう。
組織能力も同様です。「○○できます」と能力を売っている限り、これと同様のことが起こっています。「じゃあ○○をやってください」というお客様からの返答は至極当然であり、そこで低収益が確定するのです。
能力上の「強み」を事業上の「優位性」に転換しているのは何なのかと考えれば、能力という「強み」に“目的用途”を付しているかどうかの差だということに気付きます。
つまり、常々お勧めしている「提案型」とは、営業トークで「いかがですか?」といったような話し方の問題ではありません。
「提案型」とは、「弊社の能力を御社のこんなシーン(目的用途)で活用してみませんか?」と説明できるようにするための、もっと根元的な前準備のことです。
能力上の「強み」を直接的に売ると、売っているのが能力なのでお客様がやる仕事の一部を代行・肩代わりするという関係が成り立ちます。一方で、能力上の「強み」を事業上の「優位性」に転換して売ることで、お客様の事業発展のパートナーに昇華されます。
お客様の事業や生活の豊かな発展に貢献できるから、そのご利益が享受できるのです。そのためにも、能力上の「強み」を事業上の「優位性」に転換して販売する準備が大切です。
御社の組織能力上の「強み」は何ですか?
“目的用途”を付して事業上の「優位性」に転換していますか?