【第73話】新事業を成功に導く顧客“ニーズ”の捉え方

若かりし頃、マーケティングの授業では「欲しい」についてこう教わりました。

 

ニーズ(needs:必要性)とは「喉が渇いた」。ウォンツ(wants:欲求)とは「コーラが飲みたい」。つまり、ニーズとは足りない状況のことで、ウォンツとはそれを満たす具体的な商品・サービスのことであると。

 

この説明におけるニーズとウォンツの関係は、「喉が渇いた」というニーズが先に在り、続いて「コーラが飲みたい」というウォンツへとつながっています。

 

喉が渇いたとかお腹が減ったといった様に、ニーズの存在がハッキリしている領域を対象に新事業を構築しようとすると、そのニーズに対応する既存の競合商品群と比べて、どうやって選ばれるか、どうやって違いある商品を作り出すか、といった方法論レベルに陥ってしまいがちです。これではニーズに対して従属的過ぎます。

 

新事業展開を考える場合、ニーズ起点でウォンツを考えていくという順番で進めようとすると、なかなか上手くいきません。

 

理由は簡単です。見えるニーズは既に何らかのウォンツによって満たされているからです。こんなニーズがある、先行企業の商品(ウォンツ)はどうだ、これに優る商品を作れそうか。。。難しそうだ。。。となり検討がドン詰まりになってしまうのです。

 

数多くの事業計画を拝見しますが、「新しい」と感じるポイントは業種・業態に関わらず常に共通しています。

 

実は商品(ウォンツ)に対して感じるのではありません。ニーズに対して感じるのです。

 

その実、ニーズとは状況や心情で区分した“市場”だということです。そして、その市場はこちらで自由勝手に決めていいものです。何も人が作った枠組みに、こちらから乗る必要など全く無いのです。

 

新ニーズというと何やら聞きなれないでしょうが、新市場というよりも分かりやすいし、新事業を立ち上げていくという難航苦行に立ち向かっていけそうな感じを覚えます。

 

何も難しいことをやろうと言っているのではありません。例えば、自社商品の「ゴザ」を「敷物」としてではなく「滑り止め」として売っては如何ですか?と申し上げています。

 

「朝、雪かきする時間は無いけれど、簡単にでも玄関前だけ滑り止めをしておきたい市場」や「舗装されていない歩道が雨でぬかるんだ時に滑って転ばないようにしたい市場」というニーズに対して「ゴザ」というウォンツを当てていきましょうということです。

 

その用途向けに「ゴザ」の大きさや厚さなどを調整すれば、十分立派に新事業だということです。

 

新市場というと何やら大げさに聞こえます。大抵、市場細分化と言いつつ、地域や性別、年齢といったデモグラフィック基準での分類に寄ってしまいがちです。

 

モノが足りている昨今、市場細分化とは、物理的な機能よりもお客様の心情の方が重要です。

 

多くのヒット商品は見えるニーズに依存していません。切れる社長殿は、それを知っていて新市場という形で新たなニーズ領域を創り出しています。実のところ、真に創っているのはニーズであってウォンツではないのです。

 

これは問題そのものを自分で作って、その解答を売っている状況と言えます。問題作りを他人任せにしない気概が大切ということです。

 

お伝えしたいのは、新事業展開を考えるにあたり見えるニーズを起点にする必要性など全くないということです。

 

それよりも大切なのは、「おススメする状況(シチュエーション)」をお客様にお伝えすることでニーズそのものを喚起し、その解決策として当社の商品(ウォンツ)を選んでもらうという考え方です。

 

そのためには、「おススメする状況」をこちらから先に示すことが大切です。需要創造、顧客開発、ニーズ喚起の具体策とは、御社が「おススメする状況」をしっかりと主張することから始まるのです。

 

御社では新たなニーズをいつまでも探し続けていませんか?

御社が「おススメする状況」を発信していますか?

コラム更新・お役立ち情報をメールでお知らせします!

メールアドレスをご登録いただくと、コラム更新やコラムではお伝えしきれない情報などをメールでお知らせします。

こちらのページから是非ご登録ください。

経営者応援コラム