【第72話】成長発展のカギ握る“プロフィッタビリティ意識”の持ち方
商売とは、元来利益が出ないものです。
セミナーなどでこうお伝えすると、皆様どういう意味かと不思議な顔をされます。
ですから、例え話として「この1万円札を1万円で買って下さいと言い、誰かの1万円札と交換します。するとこの商売で1万円の売上と1万円の費用が発生したことになります。よって利益はゼロです。いかがでしょうか?」と。
すると、皆様笑いながらご納得されます。そりゃそうだと。
これは満更笑い話などではありません。商売は放って置くとこうなってしまいますよ、という怖い話をお伝えしています。
なぜ怖いのか、もう少し掘り下げましょう。
なぜお客様はこの取引に応じたのでしょうか。この答えは、実に簡単です。「損しない」からです。これは常にお客様の心理です。
この様なお客様心理によって、売価は原価へと収束していく傾向があり、放っておくと売り手の利益はどんどんと削られていきます。ですから、初めに商売とは元来利益が出ないものと申し上げました。
この法則は、原価の分かるような仕事では、いずれ利益が出なくなるということを意味しています。我々はこういった条理に対応していかなければなりません。
その前に、少し。。。健全な経営の成長発展とは、儲けを再投資することによる拡大再生産のプロセスです。
ですから、あくまでも成長原資は利益ということです。
よって、成長発展に最も大切な視点は収益性、つまりプロフィッタビリティということです。売れても利益が出なければ本質的な成長はもたらされないということなのです。
これは時系列的な問題ではあるのですが、利益をどう創出するかということが売ることに先んじて重要ということがお分かり頂けると思います。
つまり、事業全体を利益が出るように事前に建て付けておくことが大切ということです。
企業会計では損益計算書を「一年間の経営成績である」と教えます。つまり、一年間の成果・結果だと。こういったこともあり、多くの企業で「利益は結果だ」と捉えられています。
実はこの「売上の結果が利益だ」という考え方はとても危険です。
更に、損益計算書は売上からスタートしますが、実際のビジネスの勝敗を分かつのはその手前、事業企画の段階です。
どういった顧客にどのような欲しいを喚起するか、最も効率的な生産の仕組みをどう持つか、顧客からの収益フローをどう設計するか、顧客への到達導線をどう創るか。。。そしてどういった使命を掲げて事業にあたっていくのかといった、操業に入る以前の勝負です。
新事業を展開するに際して「損益計算書の上にもう一枚あるんですよ。」とお伝えしています。それがこういった売上に至るまでのプロセスであり、売上さえ上がればしっかりと利益が出るという構造的な前準備なのです。
原価論において「コスト」とは「犠牲」を意味します。経営上の設計が悪いと社員の犠牲が報われません。
戦略での負けは戦術でカバーできないと良く言われます。折角の社員・スタッフの犠牲を、成長発展へとつながる利益に変えるのは経営者の重大な役割です。
経営の成長発展とは、自分で創った階段を上るように見えます。利益を原資に次の階段を創り、より高いステージへと昇っていくのです。
そのためにも“プロフィッタビリティ思考”が大切なのです。
御社では売上の前準備は整っていますか?
利益から遡って事業を構築していますか?