【第543話】新事業を成功レベルまで引き上げるための開発スピリッツ
「次なる柱になるような新事業に取り組むと決めまして…」と社長。ご創業から着実に成長を遂げ、地域ではトップレベルの企業に育て上げてこられました。
そしてこれまで、いくつかの新事業に取り組み、そこそこの事業からまあまあの事業まで…、次こそはもっと高いレベルで「本業と呼べるような次なる柱」に挑もうとされています。
ところで、新事業ということに対する認識は経営者それぞれです。流通業で取扱商材を変えていくかのごとく、アレコレと次から次に事業替えをしていく経営者もいらっしゃいます。
一方、粛々と自らを高め他者の追随を許さないほどに高めてから世の中に打ちだすといった経営者もいらっしゃいます。
新事業の成功という視点から見れば、こうした商品サービスの仕上がり、事業のレベル感、難易度でいえば、当然のことながら、熟考されて高い位置から発射されている方が墜落しにくいと言えます。
では、そうした高いレベルだけで勝負が決まっているのかと言えば、そうではないところがビジネスの面白いところです。
とてもシンプルなアイデアが爆発的なヒットを生む…といったことが起こり得るため、願わくば手っ取り早く商売になること…なんて弱気になってしまうこともあるでしょう。
一般に、新事業は、製品市場モデルでは「製品」と「市場」という二つの軸から語られます。つまり、「新製品を新市場に」という場合、これが新事業と呼ばれます。
こうした定義的なことも認識理解として大切ですが、実務的には決定的なことが足りていません。
それは、「これ、自社にとって新事業なだけじゃないですか?」ということです。つまり、新事業と思っているのは自分たちだけ…という笑えない状況が起こり得ます。
本物の新事業というのは、「世の中にとっての新事業」ということです。これが成功レベルと呼ばれることの本質といえるでしょう。
ですから、新事業の成功確率は〇〇を鵜呑みにして、数打てば当たる…といった姿勢を取ったならば、いつまで経っても成功レベルに到達することが見込めないことはいうまでもありません。
新事業立上げにあたって大切なことは、成功するためには自分たちのみならず世の中との関係で、そのレベルに達する必要があり、それが事業開発の目標だということです。
こう考えれば分かることがあります。
それは、新事業というのは探しても無い…ということです。
もちろん、新事業を成す新商品や新たな顧客欲求、フィナンシャルモデルといったことは、新事業の切り口、アイデアとして不可欠なことです。
ですか、そうしたアイデアは探索しつつも、それがヒントになることはあってもそれ自体が商売になることは決してありません。
お客様がその新商品・新サービスの情報に触れた時、なるほど、在りそうでなかったな、そうきたか…といった感情を抱き、これまで以上に自分が欲しかったことを達成できると感じて下さるから購入されるのです。
経営において新事業開発とは投資です。お客様に先回りしてこちらで考える…という先行投資です。
こうした先行投資、先回りの努力が多くのお客様に認められることで、お客様も喜びこちらも儲かる…ということが成り立ちます。
大切なことなのでもう一度お伝えします。新事業は探しても在りません。世の中を探して見つかるのはヒントまでです。
そのヒントを新事業にまで仕上げるのが事業開発であり、目指すのは世の中にとって新しい…というレベル感だということです。
新事業を探そうとしてしまっていませんか?
事業開発は先回りの努力投資と覚悟して取り組んでいますか?