【第286話】経済ショックにあって強くなる事業ポートフォリオの見直し軸

顧問先企業から「この経済ショックで、〇〇商品の受注が激減していますが、××商品の直販が堅調なおかげで何とか乗り切れそうです」とのご連絡がありました。

 

このところ、弊社の主な顧問先である、モノづくり企業、エンジニアリング企業では、一部の製品や事業で販売の下方変動はあるものの、むしろ受注が伸びていたり、次の事業準備がもっと急がれたりといった状況にあります。

 

こういった、経済ショックにおいて、経営者のたくましさ、生命力というのが実にしたたかだなと感じるのは、こういったダウンサイドリスク、クライシスマネジメントに日頃から“ちょっと”備えていることです。

 

実際、とある製菓業は、従前から卸販売や直営店舗での販売と平行して工場からの直配・宅配を行っており、この経済ショックで「巣ごもりでストレスを感じるでしょうから、甘いものを…」と考え、極めて迅速に宅配対応を強化されています。

 

また、とあるエンジニアリング企業は、新事業の構築検討にあたり、こういった経済ショック、社会現象に対して頑健でレジリエンシーの高いサービスで高付加価値化を目指す検討の方向性に舵を切っています。

 

さらに、とある技術企業の社長は「試され時、アドレナリン出てきました」と仰います。もう既に気持ちは平時になく、来るべき臨戦態勢、戦闘モードに入っておられます。

 

少し単純化すれば、事業経営の強さ、頑健さ、強靭性といったことは、大きく2つの軸から成っています。

 

その2軸とは、まず1つは「製品軸」、技術力・能力といったことを起点にした経営の強さです。感覚的には技術力・組織能力が高く、同一の技術市場のピラミッド構造においてトップ3割に居るような強さです。

 

こういった市場ピラミッドの上位ポジションというのは、いわば大企業と呼ばれるような企業の領域で、市場を同じくするトップ3割の大企業とそれに続く7割の挑戦企業という構造にあります。

 

では、こういった大企業のみが強さ、頑健さ、強靭性が高いのかといえば、実はそうではないところに、ビジネスの妙味があります。

 

そのもう一つの軸とは「市場軸」、つまりお客様です。中小ベンチャー企業の商機、勝機とは、まさにここにあります。

 

大切なことなので、もう少しお伝えするならば、ビジネスは「製品軸(技術・能力)」と「市場軸(お客様・心情)」という大きく2つの軸から成り立っており、例えば同じような製品を競っていたとしても、市場が異なれば、それは全く異なるビジネスだということです。

 

つまり、技術・能力の差が如実に表れる「製品軸」だけで勝負が決まるのではなくて、「市場軸」という括り、お客様のご期待にどう応えるかの括りによって、ビジネスの強さに差が生まれます。

 

この視点から中小ベンチャー企業の強さを育てていこうとするならば、「製品軸」いう技術・能力だけで大企業と真向勝負するよりも、まずは「市場軸」を上手く設定することで、自社独自の活路を見出していくことが賢明だと分かります。

 

ただし、この際、大切なことがあります。それは、「製品軸」を置き去りにして、単に「市場軸」だけで稼ごうとするのではないということです。そうすると、提供方法や条件提示…といった表面的な違いを追っただけの極めて軽薄なビジネスになってしまいます。

 

当然のことながら、強く永い経営の中核にあるのは製品軸です。これが、価値の提供者としての経営の礎であり、その組織能力を育てるために経営者の苦労があるのです。

 

ビジネスというのは不思議な側面があって、ごく稀に「製品軸」をさて置いて、市場トレンド、地域ポジショニング、制度のひずみ…といった幸運な「市場軸」だけで急成長を遂げる企業が現れます。

 

この読みも経営者の才覚ではあるのですが、本物の強さとは自助努力によって組織能力的に培われるものです。目先の嗅覚も大切ではありますが、そのような激変の中にあっても、本業と呼べる技術・能力による「製品軸」を基軸に、その応用による「市場軸」の複線化で強い事業ポートフォリオを構築していく意識が大切です。

 

中核となる技術・能力を培おうとしていますか?

その上で、その技術をお客様に独自応用しようとしていますか?

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