【第53話】今すぐできることで経営が改善しない理由

“改善(カイゼン)”が日本的経営の特質としてよく取り上げられます。“改善”は現場の工夫努力のため、比較的お金を掛けずに、能力の向上、技術の習得、組織的な生産性の向上といった成果が期待できます。

 

自明ながら、とても大切なアプローチです。こういった取組は、積み上げていくことで求める成果が得られる事柄に向いており、精神論を重んじる日本人にとって、地に足の着いた分かりやすいアプローチといえます。

 

一方で、“改善”努力を行っているにも関わらず、経営が浮き上がらないという状況をお見受けします。

 

今すぐにできる改善を積み上げることはとても大切な取組ですが、あえて語弊を恐れずにお伝えすれば、それだけで経営が改善するという妄信は捨てた方がよいでしょう。

 

では、なぜそう言いきれるのでしょうか。

 

ところで、ふと旅行しようとなった時、みなさまはどういった手順で宿を選んでいるでしょうか?

 

先ずは旅行のシーンに合わせて、シティホテル、ビジネスホテル、温泉旅館、湯治場、民宿。。。といった業態を考えるでしょうか。以前から気になっていた宿があれば候補としつつ、情報収集のためにネットを検索。その宿のサイトがあれば調べた上で、その他、条件に合う宿がないか旅行サイトで検索、人気順や価格順などでソートしながら、いくつかの候補に絞り込んでいく。。。といった流れが思い浮かびます。

 

では、一昔前、宿泊先を探す時、どうやっていたでしょうか?

 

既にお気付きと思いますが、選択プロセス、購買行動があまりにも変わってしまっていることに愕然とされるはずです。

 

こういった状況の変化に対応しないまま、昔ながらの打ち手を必死で展開しているとすると。。。ということなのです。

 

無論、旅館であれば、料理、接客、清掃、アメニティ、分煙。。。といった基本事項は大切でしょう。ですがこういった基本事項はどこのお店でも気を配っています。

 

よって、こういったベースオペレーションの徹底や改善だけで、「差」や「違い」を生み出すことが難しくなっているのです。

 

これまで見てきた様に、経営環境、つまり前提が変わってしまっている場合、その前提を置き換えて事業モデルや業務を設計し直すことが必要になってきます。

 

製造プロセスに例えれば、製造段階における改善努力ではなく、前提を計算諸元として設計そのものをやり直すことが必要になってくるということです。

 

モノ創りの世界では、伝統工芸品でもない限り、設計を無視して製造から始めるということはあり得ません。簡単なものであっても設計図を書くものです。

 

こういった設計段階と製造段階を経営に置き換えれば、それぞれ企画段階と実行段階に相当します。

 

つまり経営環境の変化を踏まえて、企画に立ち返って業務を再設計する必要があるのです。

 

巷で言う「走りながら考える」とは「設計しながら製造する」と言っているのと同じであって、そんな事が常人にできるはずがないのです。

 

経営をもう一段飛躍させようと考えれば、前提となる状況を確認し、企画段階に立ち返る必要があります。

 

そのためには、通常の業務を改善しながら走らせつつ、平行して一旦立ち止まって企画に立ち返り設計し直す時間が必要です。

 

御社では経営の前提となる状況変化を捉えていますか?

企画を見直す時間を取っていますか?

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