【第50話】粋な投資の心得

「〇〇という設備があれば増産できるので売上を増やせます。ですが、投資額が大きいのでどうしらたよいでしょうか? そのために資金を工面する良い方法はないでしょうか?」といった趣旨のご相談はとても多いかと。

 

設備があれば。。。そのために資金があれば。。。どのような事業を営んでおられても経営者にとって常態的なお悩みです。

 

事業を縮小しながら儲かる範囲でやっていくという縮小均衡の過程にあればこんなお悩みは起きにくいかもしれません。しかし、経営を維持・拡大しようとすれば、企業がどれだけ大きくなっても、設備、人や技術、資金は常に不足します。

 

経営拡大の検討にあたり、設備を導入したり、技術を習得・開発したり。。。先行的な投資が必要になってきます。

 

自己資金で投資できていれば良いのですが、大抵は多くを借入によって賄うため、投資した案件が上手く回らないと、たちまち返済に窮することになってしまいます。

 

こういったご相談の際には、構想の全体をお伺いした上で「その先は、どうしていきたいですか?」とお聞きしています。

 

すると大抵は「???」になります。これは、投資案件を検討している時、社長殿にとってその実現がゴールイメージになってしまっているからです。

 

それを実現するだけでも難しいのに、その先まで考えられるか。。。そのお気持ちも痛いほど分かります。

 

事業の成長とは山を登るが如く段階的なものです。次の“一手”だけに過度に依存することは危険です。目指す未来に向かって一手、一手、積み上げていく発想がとても大切です。

 

昨今はM&Aも盛んですから、事業や会社そのものを買うことで経営を拡大していくという方法を選択されることもあろうかと思います。

 

また、情報戦、広告戦争の時代と言わんが如く、広告投資でレバレッジを掛けて一気に事業を拡大していこうというビジネスモデルも多くお見受けするようになりました。

 

もちろん、経営者はこういった金融的な手法や広告投資戦略も事業拡大に向けた一つの手段として認識し、上手く付き合っていかなければなりません。

 

ただし、事業の成長を継続性の観点から考えた場合、長期的な視点で必要な能力を自社内にいかに育て、保ち、高めていくかということを中心に据える必要が出てきます。

 

つまり、バランスシートの左側、事業面・運用面の構想が先にあって、それを実現していくための右側、金融面・調達面という思考的順番、優先順位が大切です。

 

金融会社は右側から事業の発想がスタートします。昨今は運用先にこだわりを持ったファンドなども多くなってきましたが、事業へ資金を提供するというのが金融会社の役割であり、運用先はリターンが得られれば基本的に何でもいいのです。

 

一方、事業会社は違います。まず、実態経済の担い手として社会的な役割があります。「当社はこの役割で世の中に貢献していきます。ですからその役割については当社にお任せください。」という意志を表明し世に問い続けていくことになります。

 

投資を検討するというと何やら数字でゴリゴリしていくイメージかと思われますが、投資検討の実務としては数字面のみならず投資の戦略面、すなわち、将来構想の明確化とその実現に向けた事業の“展開”をシナリオとして仕上げていくことの方が重要です。

 

投資という駒を使って全体としてどういう手を進めていくのか。当社が社会的使命・役割を全うし続けていくための「勝ち続け方」の検討なのです。

 

その役割が今後も儲かり続けるかどうか分からない。でもその役割を担っていくと決めている。その役割を続けていくためには儲かるカタチで行っていく必要がある。だからこそどうしたら良いか。その工夫努力が表面化したものこそ投資なのです。

 

自社でしっかりと役割認識を持ち、その醸成と拡大に力を注ぎ続けている。こういう姿勢にお客様は“粋”という違いを感じ、応えてくれるのです。

 

御社の役割認識は明確ですか?

御社の投資は、その先を見据えていますか?

コラム更新・お役立ち情報をメールでお知らせします!

メールアドレスをご登録いただくと、コラム更新やコラムではお伝えしきれない情報などをメールでお知らせします。

こちらのページから是非ご登録ください。

経営者応援コラム