【第49話】事業の“型”に合った成長力の育て方とは
世の中、社長の数だけ事業があります。これらは何一つとして同じものはありません。正解など無い世界です。
しかし、儲けの“型”として事業を類型化することは可能で、この類型化を意識して軸足を持っていることは、経営を高めていく上で欠かせない必要条件といえます。
産業の高度化に伴い分業や連携が進み、やろうと思えば契約で色々できる世界になりつつあります。だからこそ、軸足を見失いやすい時代であり、経営が迷子になっている状況をお見受けします。
儲けの軸足をハッキリさせるという意味で、事業を類型化すると大きく二つに分けることができます。
一つ目が、製造業、建設業、農林漁業等、モノを作ってその対価を得るという事業です。「対価型事業」といえます。
もう一つは、卸売業、小売業、商社等、モノを流通したり、販売や仕入を代行したりする事業です。「流通型事業」といえます。
そして、近代経営において物事をややこしくしているのがサービス業という生業の存在です。どんな事業でもサービスと切り離して考えることなど出来ないので、そう考えれば世の中の事業は全てサービス業だといえてしまいます。
“サービス”の用語定義からいくと、「無形性」や「生産消費の同時性・不可分性」といったあたりがキーワードで、要はカタチが無いモノという一見矛盾した定義です。
例えば、散髪、マッサージ、コンサルティング。。。
これらの例を見てお分かりのとおり、カタチは無くてもサービスの提供にあたっては一定の能力を有することが前提になっています。
例えばレストラン。飲食サービス業に分類されていますが、調理ノウハウを有し、食事や飲み物といったカタチあるモノを提供しています。ですからこういったサービス業は「対価型サービス業」といえます。
一方で、同じレストランでもフランチャイズだったりすると話は違ってきます。料理を作るノウハウは本部から提供されたもので、フランチャイジーは本部の持つノウハウの流通、転売を行っているといえます。ですからこういったレストランは「流通型サービス業」といえます。
このように、同じ飲食サービス業であっても異なる儲けの軸足があり、「対価型サービス業」と「流通型サービス業」の二つの類型で捉えることができます。
事業によって儲けの軸足は構造的に異なります。対価型の場合、自社で一定の能力を保有することが前提にあるため、儲けの軸足で迷子になることは少ないように見えます。
一方、迷子になる事業の多くが流通型のサービス業です。自分以外の誰かが持つ強みやノウハウを流通・転売して事業を成り立たせようと画策してしまうのです。ですが、流通・転売も事業であり誰でも簡単にできるようなものではありません。
対価を得られる核となる能力も持たず、流通のノウハウも無い。であるにも関わらず他力を転売して口銭を得ようとしてしまう。どう考えても無理な相談です。
対価型事業の場合、モノを創る能力の開発・蓄積が儲けの源泉であるため、長期的な視点から能力の蓄積・向上を図っていくことが成長の原動力となります。
一方、流通型事業の場合、売りモノや売り先についての情報蓄積、売り方についてのノウハウが儲けの源泉となるため、人的ネットワークの拡大、販売ノウハウの蓄積・改善といった元来とても俗人的な能力を拡大再生産の仕組みとして、いかに組織ノウハウ化していくかが成長の原動力となります。
核となる収益構造が対価型なのか流通型なのかをしっかりと踏まえ、そこに意図的に軸足を据えて成長力を育んでいくことが肝要です。
御社の事業は対価型ですか、流通型ですか?
成長力の育成は“型”に合ったものになっていますか?