【第41話】未来を見出すフィナンシャルモデリングの勘所

「お金は後からついてくる」というのは、然るべき事をやって実力をつけていけばいずれは。。。信頼や信用を大切にしていればいずれは。。。というとても大切な事ですから、世の中、本当にそうあって欲しいと願うところです。

 

ところが、事業経営となれば「後からついてくる」かどうかがとても重要です。

 

事業経営はお金のためだけにやっている訳ではありませんが、事業を継続していくためには、自社のお金について、しっかりと意識しておくことが肝要です。

 

ところが新事業や販売拡大の検討にあたり、お金の検討はとても後回しにされがちです。

 

「フィナンシャルモデリング」とは、事業の数字シミュレーションのために作成した計算モデルで、スプレッドシート上に、事業の売上や費用の関係を構造的に作り込んだものです。

 

これを作っておくことで、ある要因の変化に対して結果の変化を予測することができるようになります。

 

こう言ってしまうと簡単に出来上がる様ですが、実はここで多くの企業がつまずきます。

 

典型的なつまずき方。それは、損益計算書のフォーマットを埋めていこうとして、費用の積算から始めてしまうことです。

 

確かにこれから使う「費用」は、自分が使う訳ですから積算して把握することができます。一方「売上」は、事実上やってみなければ分からないので、後回しにされて最後に適当な数字が置かれてしまいがちです。

 

かつてJohnsonとKaplanは名著「レレバンス・ロスト(有用性の喪失)」で、管理会計が経営に役立たなくなっているのではないかと、会計学者ら自らが自戒的に反省を試みました。

 

これは今となってみれば当然の文脈と言えます。会計制度とは基本的に内部管理の制度だという事です。ですから、欧米で管理会計は原価論と同義として用いられます。

 

この内部管理の仕組みができあがっていれば、原価が企画でき、売価が設定でき、粗利を見通すことができる。。。といった手順で、そこから企業の未来を計画していくことができました。これは費用から出発する考え方です。この発想は、モノが足りなくて作れば売れていく時代には有効な考え方だったと言えます。

 

ところが、モノが足りている時代となれば、事業の未来を見出していくために必要なのは、費用の積算ではありません。売上の創造、つまり、需要や顧客そのものを自らの手で創り上げていかなければならないのです。

 

そういった状況下であればフィナンシャルモデリングにあたって、売上から出発することが正しい手順になります。ところが残念ながら損益計算書に売上は一行しかありません。これでは事業の未来を見通すには全然足りません。

 

フィナンシャルモデリングとは、売上の企画化・構造化から出発した未来数字の設計です。

 

売上の企画化とは「そんなのがあるなら欲しい」と言ってもらうための準備、売上の構造化とは新規顧客獲得やリピート・継続の仕組みです。

 

この設計がなければ、残念ながら「お金は後からついてこない」可能性が高いと言わざるを得ません。

 

弊社ではなるべく早い段階で“お金”の検討に着手するよう強くお勧めしています。それは、数字感覚からしか実感できないその事業独特の緊張感があるからです。

 

いくら経営に手慣れた社長殿であっても新事業や新たな販売拡大の下では、これまでとは違った状況にさらされることになります。

 

ですから、例え「捕らぬ狸の皮算用」であったとしても、事業が走り出した中で起こる変化を予見し、それに対応できる思考回路を、走り出す前に予め創り上げておく必要があるのです。

 

御社では“売上”からフィナンシャルモデルを創っていますか?

その“売上”は企画化・構造化されていますか?

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