【第405話】本物のリスクテイクと社長の矜持

「追加で、もう〇億円を調達することにしました」と社長。この不安定な世相にあって難しい舵取りが求められる中、もっとアクセルを踏んでいくとおっしゃいます。

 

渾身の新製品開発投資、規模拡大を目指した設備投資、グループで事業拡大を目指すM&A投資…、こうした挑戦領域での取組みには、必ずリスクが伴います。

 

ここで、リスクとは、綺麗な感じでいえば、思わぬ事象が起こる可能性や、計画に対する上下のブレといったことです。

 

これをもう少し実務的、現実的にいえば、思ったような売上が得られず、採算が悪化し、投資回収もままならず、資金に窮する状況に陥る…といった下方リスクのことです。

 

当然のことながら、新事業とは新しいことなのですから、こうしたリスクを伴います。このため、資金調達の仕組みも、単純な出資や融資にとどまらず、こうしたリスクを織り込んだ契約が増えています。

 

実際、融資ではあるものの金利だけ返済して元本返済は満期に一括で償還するといった社債のような融資もありますし、もし元本の返済が滞るようなことがあれば資本に組み入れる転換社債のような契約もあります。

 

そもそも、こうした金融的な契約を駆使して、関係者間でリスクを分担しながらやっていかなければ、本当に新しいことを立ち上げていくことは難しいでしょう。

 

さらに、走り出して巡航できる一定レベルまで飛び立つためにも、資金という燃料を補給し続けなければならず、こうした燃料補給も経営者の役割といえます。

 

ちなみに、経営者の役割というのは大きく「実体事業の企画運営者」と「提供された資金の運用者」という側面を持ちます。

 

優れた経営者は、どちら側も担っていることを分かっており、借入が大きくなれば「私の会社というよりも〇〇銀行の会社だから」といった冗談を言うことはあっても、思うとおりに事が運ばなかったとしても単に銀行の悪口を言うようなこともありません。

 

少し話はそれましたが、経営者の運営的なリスク対応とは、日々のハンドリングでありアクセル・ブレーキといえることです。

 

こうした日々のリスク対応についても、一つひとつが判断ですから大切なことです。このため経験だけでなく、経験から導かれた勘も駆使して決めておられ、その様は、曲芸ともいえることです。

 

ただし、こうした百戦錬磨の経営者であっても、大変で難しい決定が、「大きな投資」です。

 

ここで「大きな投資」というのは、投資金額が大きかったり、投資回収期間が長かったり、返済金額が大きかったり長かったり…といったことですが、本当に経営計画を立てるにあたって難しいのはこうしたことではありません。

 

実際、こうした数字面の計画は、知識があれば“立てる”ことはできてしまいます。何とでも…とまでは言わないまでも、少し知識があればできることです。

 

こうした意味で、「大きな投資」のリスクとは、成長の軌跡、企業の歩み方に大きな影響を与える決定だということの方なのです。

 

これを逆から見れば、リスクをヘッジしようとするならば、金融的なスキームどうこうよりも、むしろ実体面で「やる事」よりも「やらない事」を決めておく方が大切なことはお分かりいただけるものと思います。だから、軌跡がつながっていくのです。

 

そして、経営者にとって、リスクテイクの難しさとは「自分で歩みを決めること」です。未知の領域でありながら自分で決めなければならない…のです。

 

経営環境の分析や社会情勢など、情報も大切ですが、成長の軌跡を自ら決めて描いていくというのは、むしろ環境適合よりも意志によるものです。大きな投資の結果は、どうなるか分からない中、難しいことを成功させていくところが経営者の腕の見せ所でもあります。

 

経営にリスクは憑き物ですが、どんな結果になろうとも環境や他社のせいにせず「自分で決めた」と胸を張っていえることが社長の矜持といえるでしょう。

 

大きな投資は「軌跡感」を持って決めてますか?

最後は、自分で決めた…といえますか?

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