【第30話】経営拡大に向けた突破口の探し方

「周囲から弊社に〇〇事業をやってほしいといわれており、どうするか迷っている。やってほしいと言われているのでニーズはあるのだが、投資額が大きいので回収できるかどうか不安だ。」

 

こういったご相談で挑戦に値する事業であることはほとんどありません。そして、私からはとても短い質問、「御社の本業は何ですか?」と。

 

重要な点がもう一つ。ここで社長殿がおしゃっているニーズとは、ビジネスとしての本物のニーズではありません。想定される顧客の声ではないからです。

 

お話をお伺いしていて経営が上手い社長殿に共通しているのは、自社の強みを起点にこれからの事業展開を考えているという点です。自社の能力・強みがこういった市場ニーズを満たす、という文脈で今後の事業展開を説明されます。今の強みとは少しズレていても、今後の事業展開の中でその部分をどう補強していくかについても説明されます。

 

すなわち、自社の強みを、どのような方向性、商品・サービスに向けていくのか、という順番で考えているということです。決して市場ニーズから出発している訳ではありません。自社独自の能力をどのように醸成していくのかを軸に、より市場性の高い、儲けの匂いがする方向性を模索しているにすぎません。

 

経営の成長拡大を図ろうとした場合、まず考えなければならないのはニーズではありません。自社の能力、すなわち“強み”です。強みを起点に事業を企画し新たに需要を創っていく以外に道はありません。

 

ですから、自社の能力を起点に新事業を模索していくという考え方の過程を経ることが有効となります。アプローチとしてはマーケット・イン発想よりも、徹底したプロダクト・アウト発想が望ましいのです。そうでないと、その商品・サービスを世に問うていく姿勢が整わないため、御社独自の道を拓いていくことはできません。

 

突破口を探すにあたり、なぜ、マーケット・イン発想で失敗するのか。自社の強みから出発してプロダクト・アウト発想で考えなければならないか。

 

マーケット・イン発想で考えると事業が軌道に乗らない時に市場や顧客のせいにしてしまうという事が起こります。市場を起点に考えているために、当初想定していた状況が変わった、競合が来た、顧客がワガママで、といった理由を挙げるような事が起こります。

 

これらの理由は現状認識としては正しいのかもしれませんが、不調の原因を外部に求めており、自社の経営が上手くいかない事を他人のせいにしようとしています。原則、経営の意思決定の責任は全てご自身にあります。事業を立ち上げる過程で“自助の精神”を培うためにもプロダクト・アウト発想から事業を画策することが必要です。

 

更に、マーケット・イン発想で考えると御社じゃなくてもできる事業に手を出してしまうということが起こり得ます。他の人でもできる事業ならその方々にやってもらった方が良いのです。自分達が何を持っているのか・何を得意としているのかを見失うと、努力を積み上げていくことが難しくなり、経営は間違いなく迷走します。そのためにも強みを起点としてプロダクト・アウトで考える必要があるのです。

 

そして、最も重要なのが「儲ける」という事に対する主体性の強さです。プロダクト・アウトで考えることで、絶対にこれで食っていくという主体性を宿すことができます。一方、マーケット・インで発想すると「儲かりそう」といったどこか主体性に乏しい他力な事業企画に陥ってしまいます。これでは突破口探しというよりも、もはや食い扶持探しです。

 

プロダクト・アウトを徹底的に考えることで、やりたいと心底思える事業が見えてきます。強みを活かして独自の未来を築こうとすることで、自ずと明らかな道が見えてきます。これこそが間違いのない突破口の探し方なのです。

 

ただし、ここで本業とは、自社の強みを起点とした多様な事業群・商品群であり、決して単一事業・単一商品の経営を推奨しているのではありません。むしろ、なるべくどんどんこれらを拡大していくことに挑戦することをお勧めしています。

 

中小企業において新事業への進出を検討するとは、生きる方向性を模索しているに等しいのですから、本当にやりたい事を探し、そこに時間を集中投下すべきです。決して誰かから勧められたりして決めるようなものではありません。

 

御社ではプロダクト・アウト発想で事業を企画していますか?

自らの意志で突破口を探していますか?

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