【第293話】存続発展のための前に進む挑戦と一段昇る挑戦の違い

この困難にあって、様々新たな取り組みがなされており、日本人の強さ、勇ましさ、忍耐強さ…に誇りを持ちます。

 

こういった中で、「何かできないかと思って…」といった発想起点から、打ち手を展開されている状況を大変多く耳にします。自ら積極果敢に動く…とても素晴らしいことです。

 

ところが、残念なことにこういった発想を起点とする多くの打ち手が、期待するほどの成果を上げることができず、「まあ、やらないよりましだった」といったことで、残念なほどに尻すぼみな末路をたどっていきます。これは、打ち手に限ったことではなくて、経営全体としても同様の傾向があります。

 

多くの事業計画、経営戦略、年に100件を超える事業向上アイデアに触れることもある中で、これが豊かな存続発展につながる打ち手なのか、あるいは、失敗とまでは言わずとも鳴かず飛ばずで時間が過ぎていくものなのか…、その違いはすぐに分かります。

 

これらの違いは、とても大切なことなので、もう少し補足すれば、これからの努力が積みあがって、望む未来につながっていくものなのか、あるいは、頑張ったといいながら無駄骨に沈んでいくのかの違いということです。

 

まず、そういった差がどのように事業計画、打ち手に現れているかというと、とてもシンプルに共通する傾向があります。

 

それは、計画が「行動計画」、いわば「ToDoリスト」になっているという点です。

 

これは何を意味しているかといえば、行動までしか準備していないことの現れであって、経営の打ち手が作業レベルなことであり、経営者の頭の中が担当者レベルだということです。

 

もちろん、毎日の実務として、目標に向けてやることを整理して、進捗を管理していくことは大切です。

 

しかし一方で、このやるべきことを、経営が未来に続いていく上での意味として整理できていないとするならば、その打ち手は単発の日雇い労働と変わらないのではありませんか…、とお伝えしています。

 

実際、「何かできないかなと思って…」という発想から繰り出される打ち手というのは、やればできるだけのこと、今までやってこなかっただけのこと、手続きレベル…、いうならば行動の範囲と量を増やす程度に留まりがちです。

 

ちなみに、打ち手には、前に進むための挑戦と、一段昇るための挑戦があります。

 

前に進むための挑戦とは、今の延長線上へと進むための行動的な努力です。これは、知ればある程度できることであって、実行といっても“処理”に近いことです。

 

一方、一段昇るための挑戦とは、事業分野や製品、採算構造を変革していくための思考的な努力です。これは、創意工夫によって生み出す“価値”のことです。

 

困難にあって、企業の色がクッキリ・ハッキリしてしまったのは、お客様の代わりに“処理”することで代行料を頂戴していた企業と、お客様のために考えて“価値”を提供して対価を頂いていた企業の違いです。

 

急激な市場縮小という中で、これまで売上に隠れてモヤっとしていた企業の真の姿が露呈しました。

 

常識が更新される時代、新常識の時代…、あらためて本物企業として存続発展を目指すならば、経営者ご自身が本質的な商売の違いに意識を持って、打ち手を準備していくことが欠かせません。

 

特に、需要に対して供給過多、オーバーストアな産業にあっては、存続競争が激しさを増すために、どんな打ち手を繰り出すかで、今後、一気に経営者の意識差が露呈してきます。

 

今後、浮くか堕ちるかの一線はここにあります。「頑張っている」のは分かりますが、その頑張りが行動の範囲や量を増やしただけであったならば、ほとんど確実に堕ちるのです。

 

存続を目指すならば、前に進むための行動的な挑戦のみならず、一段昇るための思考的な挑戦に取り組んでいくことが大切です。

 

進むのも大切ですが昇ることを考えていますか?

お客様から代金を頂戴する理由を変革しようとしていますか?

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