【第28話】リスクとの上手な付き合い方

みなさまのこれまでの経営経験の中で、嬉しかった、ワクワクした、ヒヤッとした、腹が立った、といった感情を揺さぶる出来事は星の数ほどあっただろうと思います。

 

経営にあたられていれば、毎日、次から次へと思わぬ事が報告されると思います。こういった予定していない事態が、いわば事業経営の「リスク」です。

 

経営科学分野で「リスク」とは、計画から外れる度合い。つまり下振れ(ダウンサイド)だけでなく上振れ(アップサイド)もリスクです。

 

経営者は常日頃から、「思ったより売れない」ことを想定しつつ「思った以上に売れる」ことも考えなければならないという大変矛盾した頭の使い方をしなければなりません。

 

いずれ今の時代、世の中は大きなうねりを伴いながら流れていますから、漕ぎ続けなければ置いていかれます。置いていかれれば遭難します。

 

経営を安定させようとすれば、自ずと新たなリスクに挑戦せざるを得ない。この矛盾の中で、いかにリスクを取っていくかを常に考えなければならないのです。

 

とても簡単に言ってしまえば経営とは投資です。常に先にお金が手元から離れ、その後、投資を回収し、それ以上のリターンを得るように頑張っていく行為です。

 

昨今は成長拡大のためにM&Aで他社や他社事業を買って会社を大きくしていくことも一つの方法論として重要ですが、まだまだ自社内で投資を繰り返して事業の実態を育てていくのが基本路線です。

 

ここで経営とは投資である、と改めて申し上げているのには理由があります。モノが足りている時代の経営とは、決まりきった事を普通にやっていれば自ずと利益がもたらされる様な環境ではありません、とお伝えしたいのです。

 

つまり、経営とは極めてギャンブルに近いものだという認識を持っておく事が肝要です。ここまでの表現が正しいかどうかは別にして、こういった気構えが必要だ、とお伝えしています。投資が回収できない可能性があるのです。つまり負ける可能性が高い経営環境に立ち向かっているのだという事実認識がとても重要なのです。

 

敢えてこう申し上げているのは、そうしないと意図も簡単に「こんな事がこんな程度できれば食っていくことが出来るはず」といった経済成長下にでもあるかの様な発想に陥るからです。料理を上手く作る事は料理店に不可欠な要素ですが、足りている時代にあっては、それだけで料理店を繁盛させられる訳ではないのです。

 

弊社では短期の赤字を負けとは見なしていません。新たな投資を行えば、一旦バランスシートは痛みますし、損益も悪化します。しかし、長期的に見て投資回収の可能性が高く、一定のリターンが見込めるものであれば、それは未来に対する仕込みとなります。ですから、やるとなったら勝てるようにやる。そうであれば挑戦する価値は十分にあります。

 

周りを見渡して思い出していただきたいのですが、勝ち続ける人がいます。こういった方々の基本姿勢はとてもシンプルです。良く考えて小さくても勝てる市場を創っています。そして、表には見えてきませんが投資を設計するにあたり資金面でもリスクを考慮して工夫しています。

 

特に設備投資にあたっては、リスクをしっかりと“数字”で設計していることが不可欠です。初期投資分だけ負けたところからスタートして、その回収期間をどう設定するか。計画の回収期間を超えたとしたら、そのプロジェクトとしては一旦負けです。念のために申し上げますが、資金が尽きたら負けではありません。計画回収期間に対して遅れれば負けです。そして、計画の回収期間時点において回収を終えていれは引き分け、投資回収以上のリターンを生んでいれば勝ちです。

 

リスクと付き合っていくのが上手い社長方に共通しているのは、基本姿勢として「全て自分の責任」という覚悟があることです。ですから、様々な人から話を聞き、情報を集め、自らの頭で一旦考えてから実行に移しています。極めて自律的で主体的です。

 

全て自分の責任、といっても実際、世の中の全部のリスクを負っているわけではありません。そこは関わりたくないリスクにはクールに関わらないことも大切です。これも考えているからこそ成せる業です。

 

経営とは投資である、という事実に主体性を持って向き合えば、リスクを負うにあたって起こり得る事態の範囲に想いを馳せることができます。そうなれば挑戦プロジェクトはリスクを取れる範囲の条件調整問題へとブレークダウンされていきます。

 

御社ではどんなリスクを取っていますか?

そのリスクの勝算はどの程度ですか?

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