【第274話】ビジネスの強さを生み出す発明家的経営の美学

「世界を変える」といったスローガンを耳にする機会が増えました。特に、起業、アントレプレナー、スタートアップ…といった場面で良く耳にします。

 

こういった、新たなビジネスに挑戦的に取り組む若者たちが増えるというのは、とても喜ばしいことです。ここで「若者たち」としたのは、こういった宣言は「これから始める人たちのもの」だからです。

 

実際、長く事業経営に携わってきている百戦錬磨の社長方に、こういった言い回しをされる方はまずいらっしゃいません。毎日がそういった挑戦的なことであって、どちらかといえば「次から次と、もう勘弁してくれよ…」と言いたいほど、もうその世界に棲んでおられます。

 

こういった毎日に居る経営者は、「世界を変える」といったイノベーション的なスローガンに、少なからず違和感を覚えます。

 

その理由はとてもシンプルです。「変える」ということは今を変えること、今を否定しているだけに過ぎないからです。何らかの否定的な感情は進化にあたって大切な原動力ですが、何かを壊すだけなら誰にでもできることです。

 

粛々と世の中の一端を担ってきた方々の側からすれば、「なぜ、今、こうなっているのか分かった上で言っているのか?」と聞きたくなる…、これが違和感の根源という訳です。

 

どう変えていくのかということを、どう創っていくのかという視点に置き換えてみれば、それはイノベーション(革新)というよりはむしろインベンション(発明)に近い感覚だということがお解りおただけるものと思います。

 

これは、本気で「世の中を変える」と言うのならば、そういうイノベーティブな気持ちだけではなくて、具体策としてインベンション(発明)に取り組むべきことを意味しています。

 

大切なことなので、もう少し補足すれば、そういった気持ちが出発点ではあるのですが、そのままでは単なる宣言にすぎず、実務として新たな変化を起こしていこうとするなら、いずれ具体的な“発明”をしていくことが欠かせないのです。

 

実際、経営を伸ばしておられる社長というのは、自然科学的なことや社会科学的なことで、必ず「なるほど」、「そういう切り口があったか」、「これは新しい」といった“発明”をされています。これこそが、小さいながらも「世の中を変える」ことの実務であり、価値を生む経営というものです。

 

ところが、独自の“発明”に至らず、立派な宣言の下で労働力を現金化するだけのような低収益のビジネスに留まっている経営者が多いのも事実です。

 

面白いのは、そのような経営者に限って、宣言だけ立派であれば、立派な経営だと勘違いされていたりすることです。これはいわば、既にある事業の運営者と呼ぶべきことであって、世の中に新たな価値を生む経営者ではありません。

 

当たり前ですが、それはスタートラインに立っただけでしかありません。もう遥かその先を走っている経営者方が数多くいらっしゃるのです。その先人たちの“発明”を超えていくというのが挑戦の中身です。

 

先人たちの“発明”を超えていかない限り、御社の経営は、どれだけ立派な思想やスローガンを掲げようとも、その他大勢でしかありません。

 

例え小さかったとしても独自の“発明”を切り口に新たな事業を立ち上げることが大切です。それこそが世の中に一石を投じることであり、延いては世界を変えることにつながります。

 

この発明意識こそが、独自路線を歩む経営者の美学なのです。発明者としての自信、新たに生み出された価値、お客様からの承認…。こうして強いビジネスが生まれます。

 

そして、“発明”への尊敬がもたらす売上からは利益が生まれます。この利益は、また“発明”に再投資していく資金余力を生み出します。

 

このように“発明”を起点とする拡大再生産の成長路線は、“発明”の能力向上を伴いながら複利的な成長をもたらすため、経営が時間と共に強くなっていくのです。

 

「新事業に挑戦」だけなら「スノボに挑戦」と大して変わりはありません。ある意味、やるだけなら誰にでもできることです。大変なのはそこに独自の“発明”があるかどうかの違いなのです。

 

新事業にあたって独自の“発明”は何ですか?

経営者として運営者に留まらず発明者になろうとしていますか?

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