【第27話】どんな会社と呼ばれていますか?

どんな会社と呼ばれていますか?

 

この質問は経営者方にとって嬉しくもあり、厳しくもあり、大方答えるのに戸惑われます。

 

こう呼ばれたいという自社の在り方に対する理想は持っているものの、現実にそう呼ばれている、と言い切るにはちょっとおこがましい。。。といったお気持ちがあるようです。

 

目指してはいますがまだそこまで行っていない、行けていない。。。と、やや遠慮がちにご説明いただく事が多いように感じます。

 

一方、自社の商品・製品の特長、設備や納期等、物理的なモノについてはとてもはっきりと自信を持ってお答えになられます。事実関係なので説明しやすいということもありますが、これまでに幾度となく商談の席などでお話をされてきたからだろうと思います。

 

「どんな会社と呼ばれていますか?」という質問に答えることの難しさは「何屋さんですか?」ではないところにあります。つまり、何をどのように提供しているかではなくて、顧客側から見てどうなのか、という質問だということです。

 

業種・業態といった言葉で商売を括ることが難しくなっている時代です。何を提供しているかが「業種」、どのように提供しているかが「業態」です。製造業・メーカーであっても自社をサービス業と定義している会社もあります。

 

同じモノを扱っているために、業種としては同じ括りであっても、中身としてやっていることは全然違っていたりします。

 

業種は「小売業」であってもスーパーとコンビニでは「業態」が異なります。こういった教科書的な例示は、用語を理解するためには役立ちますが、経営に何らかのテコ入れをしようと考えた時には、殆ど役に立ちません。

 

その理由はとても簡単です。今の時代における経営のテコ入れとは、自社独自の定義で新しい業種・業態を作ることに等しいからです。

 

例えば、タクシー業。顧客にとってタクシーを利用する理由は様々です。急いでいる、歩くのが面倒、暑い・寒い、足がケガしている、他の交通手段が無い。。。

 

「お客様の利用する理由など分かりません。我々はあくまでもタクシー屋なのだから、手を挙げてくれたお客様を安全に目的地までお連れするのが仕事です。」といったお答えが返ってきそうです。

 

ただし、こう答えていられるのはタクシーがつかまらない状態の時、という条件付です。では、足りている状態になるとどうなるか。話は変わってきます。

 

足りている時代になると顧客側の立場から自社が提供している機能や価値を説明できなければ顧客を獲得できなくなります。

 

更にその商品・サービスの利用法について企画提案することで、供給に見合った需要そのものを創り上げていかなければなりません。

 

その結果、その商品・サービス利用の価値について顧客視点で説明していこうとすると、図らずも“専門化”が進んでいくことになります。専門化そのものが目的ではなく需要を創造しつつ選ばれるためには、そうしていかざるを得ないのです。

 

事実、タクシー業では介護タクシー、観光タクシー、タクシー代行、買い物タクシー、定額タクシー。。。利用シーンに合わせて様々なタクシーの業態が新たに生まれています。

 

御社での事業展開を検討するにあたり重要な着眼点は、同一の機能であっても利用する状況によって提供する価値は変わる、ということです。

 

ですから、新たな需要を掘り起こし選ばれる存在になるためには、自社の能力を踏まえて、得意とする状況(シチュエーション)を中心に顧客への訴求力を上げていくことが有効です。

 

お客様の事を考え抜くことで新たな専門分野が生まれます。この過程を経ることで、その企業独自の表情や空気感が現れてきます。そしてお客様は「あの会社は〇〇だな」と感じるようになるのです。

 

御社では自社を何業と呼んでいますか?

お客様視点で自社の専門を説明できますか?

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