【第241話】業界意識を変えると経営機運が上向く根本理由

「ウチの“業界”は9割が赤字だから…」と仰るのは、とある“業界”のご重鎮の会長殿。「やれることはもうやってきたのだから、ここから何かを変えられるはずがない」とお考えで、これからについてやや諦めムードのご様子です。

 

しかし一方で、若い社長のやる気は十分で、あきらめてなどいません。このままでは勝ち目がない…という正しい現状認識は大切ですが、“業界”の9割が赤字…といった現状分析だけで、状況を打開できるはずもないことは火を見るよりも明らかです。

 

そして、その後…、社長をトップとしたプロジェクトは、腹を決めて新機軸を打ち出しました。そして、パンフレットができ上るのを待たずに、口頭の営業で新たな取引先を相次いで獲得しました。

 

ここで、“業界”というのは一体何なのでしょうか。よくよく考えてみれば、とても不思議な括りです。そもそも、「業界の9割が赤字」なのであれば、ある意味、そこから脱出しなければならないということです。

 

その前に、“業界”といったことが役割を果たしてきたことも理解しておかなければなりません。技術情報を共有したり規格を統一することで産業効率を向上させたり、一丸となることで政治行政への発言力を高めたり、産業統計といった実体把握に協力したり…といったことです。

 

変化の時代にあって、“業界”の役割というものも変化していかなければならないのですが、実は、これがとても難しいことです。

 

その理由はとても根源的です。“業界”は、“業界”発展という「育てる」と同時に「守る」役割を担っているためです。“業界”は、発展的ではあるものの、一種、守りの取組みでもあるのです。

 

よって、“業界”の長は、「みんなの意見」を発信すると同時に、どうしても業界内に足並みを揃えることを求めがちです。そして“業界”が自ら限界を抱えてしまうのも、この「みんなの意見」なのです。

 

この「みんなの意見」というのは、“業界”内企業の共通項ですから、ある意味で「悩み」や「お困り」といった、いわゆる「問題解決」になりがちです。悪い状況を改善したからといって、良い状況とは限りません。本来、発展とは良いところを伸ばしていかなければならないところ、どうしても悪いところを治すための発想に陥りがちです。

 

ご自身の企業の独自性高い豊かな成長発展というのは、他のどの企業とも似て非なるものです。そういった状況を頭の中に描きつつも、“業界”として足並みを揃えることに意識があるということは、アクセルを踏みながらブレーキを踏むようなものです。これらは、マインドとしては対極にあるのです。

 

常々、「“業界”の長を引き受けることお控え下さい」とお伝えしているのはこのためです。後継予定のご子息などにも「団体の長を勧めないように」とお伝えしています。

 

この理由は、もうご想像いただけるものと思います。「独自の成長発展を描く思考を持てなくなる」からです。

 

産業構造自体が変化していく中にあって、既存の「枠」である“業界”というのが成り立ちにくくなっています。こういった「大人の活動」も大切ですが、社長として最も優先すべきは自社の従業員を守っていくことであり、そのためには自社をいろんな意味で、自立、独立した存在にしていくことが欠かせません。

 

これらは、思考として対極にあって両立が難しいことは承知の上で、あえてお伝えしています。もし今、そこに居るとするならば、絶対的にお伝えしたいのです。「一塁ベースに足をつけたまま盗塁はできません」と。

 

社長として独自性豊かな発展を目指していこうとするならば、“業界”といった既成の「枠」、事業フィールドを自ら壊していく気概が大切です。

 

次なる成長は、必ず今の「枠」の外にあります。そして、“業界”意識がこれを求めることを邪魔します。「ウチの“業界”は…」といいながら全員で沈んでも仕方ありません。変化が激しく早い今こそ、“業界”に所属の安心を求めることをやめて、自らの船を漕ぎ出す勇気を持つことが大切です。

 

ご自身の事業を既存の「枠」に当てはめすぎていませんか?

それはそれとして、ご自身の船を漕ぎ出していますか?

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