【第239話】豊かな成長をもたらす新企画の“新しさ”の条件

「冷やし中華はじめました」を、もう間もなく街で目にする季節になってきました。この見慣れたメッセージが今だに使われているのは、なぜでしょうか?

 

例えば、これが「かつ丼はじめました」だったらどうでしょうか。「そうですか」、「分かりました」…。このメッセージの有効性が、それほど永くないことは、お感じいただけるものと思います。

 

では、なぜ同じようなメッセージで、これほどの違いが生まれてしまうのでしょうか。こういった一見小さなことにこそ、商売の面白さと難しさがあります。

 

「冷やし中華はじめました」が、なぜ今だ有効なのかを考えると、このメッセージには「季節限定」を含んでいることに気が付きます。

 

つまり、心の中に「夏が来た」という新たな季節の到来を告げつつ、冷やし中華という商品そのものではなく、季節を愉しむ期間限定のご提案メッセージになっているのです。

 

普通に考えるならば「夏、暑いから冷やし中華…」なのですが、一方で「冷やし中華を食べると、夏が来たって感じ」ということも耳にします。この逆側から両方が成り立つというのはとても重要な示唆を含みます。

 

こういったことは、皆がどこか季節の移ろいを一種の楽しみと感じているからに他なりません。気温、湿度…、物理的な条件だけで冷やし中華が注文されているのではないのです。

 

大切なことなので少しまとめますと、「冷やし中華はじめました」がいつまでも古くならないのは、食べる場面自体が誰にとってもまた“新しい”ことに起因しています。「“新しい”夏に食べるいつもの冷やし中華」という訳です。

 

新事業の販売拡大、既存事業の再構築による販売拡大…、いずれにしても「足りてる時代」、お客様にとって何らかの“新しい”がない限り、販売を伸ばすことは困難です。ご来店いただくことも、ホームページを見ていただくことも、DMを開封していただくことも、折り込みチラシを読んでいただくことも…、ムリというものです。

 

「夏…、暑いのはイヤだけど、どこか好き」。こういった心情に想いを馳せることなく、「最近の夏はもっと暑くなってきたから、もっと冷たいメニューが売れるのではないか」といった発想で、新メニューを考えるとどうなるでしょうか。間違いなく単に冷たいだけのメニュー、「もっと冷たい冷やし中華」が出来上がります。

 

ハッキリ申し上げて、これはお客様にとって全く新しくありません。お客様は「冷たい」ことも求めていますが、同時に「夏を感じる」ことも求めているのです。ところが、多くの新企画が、こういった構造的な間違いを犯します。

 

当然のことながら、「新事業」、「新商品」というのは、挑戦領域ですから「自社にとって“新しい”」という意味でありつつも、商売として成立させるためには、お客様にとって“新しい”でなければなりません。だからこそ、お客様にとって“新しい”とは何なのかということが大切です。

 

これまで見てきたとおり、“新しさ”は商品の物理的な特徴だけで成り立つものではありません。むしろその背景にあるお客様の心情や愉しみ、そういったところに届くかどうかこそ欠かせない条件です。

 

この「お客様の心情、愉しみ…」は、ある意味で極めてベーシックなものであるために忘れられがちですが、「足りてる時代」、お腹が空いたから食べるも正解ながら、何を食べるかという選択決定において、その上の階層、心情こそが「真のマーケット」であるということを忘れてはなりません。

 

つまり、我々、企画側に求められているのは、この「真のマーケット」に応える「新たな発想」、「新発想」なのです。これまでとは違う我々側の発想が試されているのです。

 

実際、とある社長の新事業は、「〇〇という新発想」として極めて斬新なコンセプトの下で新商品が企画され、その“新しい”をお客様が感じ取り、大変なご好評を得ています。

 

発想の“新しい”こそ、企画の重要要素であり、マーケットとなる心情がプリミティブでベーシックであればあるほどに、そこで商売を成り立たせ続けていくために求められる新発想には、もう一捻りの創意工夫が求められているのです。

 

自分たちの「発想」自体を考えようとしていますか?

新発想を伝わる言葉にしていますか?

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