【第231話】中小・ベンチャー“働き方改革”的新事業のススメ

「包容力が自慢の私ですが、もう考え方を変えました」と仰るのは、休日や営業時間などを大幅に変更するとともに、人事労務制度の刷新に取り組まれている社長。

 

笑顔でお話をされていますが、こういったいわゆる「働き方改革」に取り組まざるを得ない理由は、労基法といった制度への対応というよりも、むしろ従業員の働くことへの姿勢や、有給休暇などに対する権利意識の強まりといったことで、止む無し…とのご判断に至ったようです。

 

またクライアント企業の社長は、競合他社がパート・アルバイトや個人事業者への業務委託といった方法で総額人件費を抑えつつ価格を下げていく中、これまでのように従業員を抱えたまま競争力を維持していくことは難しいとの判断から、従業員の業務上の責任範囲の明確化や退職金制度の検討などを含めて、総合的に就業規則などの刷新に取り組まれています。

 

「働き方改革」が是との風潮の中、全く異なる見解、言い換えるならば懸念を持っておられる経営者は多いことと思います。そして、その懸念の根深さと対応の方向性について、頭を抱えておられることと思います。

 

言うまでもなく、経営者にはこういった保護施策は一切ありません。労働時間に制限はありませんし、本来、法人とは無関係な私的な家屋敷を抵当に借金して事業に挑戦している場合もあります。

 

「働き方改革」で、経営者と従業員の距離が遠くなってしまいました。これまで家族のような想いで人間関係を培ってきたつもり…、それが通じないのであれば仕方ない…、残念ながら…というのが「止む無し」の一言には込められています。

 

そうはいっても、状況に応じつつ経営は続けていかなければなりません、前述の社長方のように、経営の現場は切実なバランスの上で切り盛りされています。当然のことながら、ある種の制約が増えればそのバランスは崩れ、新たな均衡点にシフトせざるを得ません。

 

「働き方改革」では、従業員が働いてくれる時間が短くなります。実は、経営者はこれを甘受することができます。その甘受方法とは経営を新たな制約に合わせて、一旦、縮小均衡させることです。営業時間を縮めたり休日を増やし、売上を減らしつつも、それに係るコストをそれ以上に抑えることで、採算を維持できる水準まで経営規模を一旦縮小させるのです。

 

一方、従業員側から見て、働く時間が短くなるとどうなるか。休日・余暇は増えるでしょうが、「休みを取らなければならない」ため、より短い時間で成果を出さなければならないことになります。これはむしろとても厳しいことです。

 

また、こなす仕事の総量が減れば、経験値が積み上がらず、能力を高める機会が減るということでもあります。要は、働く側の意識として、仕事を「修行」と捉えるか、単なる「労働提供」と考えるかで、全く異なる二つの働き方が生まれ、「働き方改革」によってこの二つの意識差は、今後より一層ハッキリと分かれていくということです。

 

社長の心配はここにあります。親のような気持で従業員に接して、その成長を喜びとしてきた社長ならなおさらです。そんな論調に流されず、仕事を通じて成長して欲しいと切に願っておられます。

 

仕事を対価を得るための単なる労働提供と考えるような人に、残念ながら成長はありません。経営者が「そっち側に行くな」と言いたくとも、「働き方改革」で法律上、立場上、もうそれが言えなくなってしまいました。

 

とても単純なことですが、従業員の本当の成長は、結局、仕事を通じて培っていくしかありません。そのことを考えれば、本当の育成とは仕事を任せることであり、高度な育成とは高度な仕事に挑戦させることです。

 

従業員に「もっと頑張れ」と口で言えない今、それを伝える方法は一つしかありません。経営者自身が今よりも高度な事業に挑戦し、その仕事を通じで従業員に「そっち側に行くな」と伝えていくことです。そして、仕事を「修行」と考え成長を望む従業員に、その機会を創っていくことです。

 

それを望まない人に無理強いは難しいとして、少なくとも本人が成長を望み、いずれは会社を背負って立つ経営者を目指す意志があるならば、若いうちから経営者が置かれているような逃げ場のない無保護な世界を意図的に経験させてあげることが大切です。

 

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