【第198話】ビジネスを本質的に成長させる市場創造の進め方

「新入社員に“シェア”というと???になるんです。カーシェアとか…、そちらの方を思い浮かべるらしく、マーケットシェアという言葉を知らないんですよ」と、とある経営者のお話。

 

昨今、“シェア”という言葉を聞くことが、新聞でもニュースでも…、めっきり減りました。ですから、若い方々は“シェア”という言葉をほとんど聞かないために、こういった???という反応が起こるのです。

 

さらに言えば、新聞やニュースだけでなく、経営を伸ばしておられる経営者ほど、“シェア”という言葉を使わない傾向にあると感じています。

 

その昔、事業の成長や新事業・新製品を考えるにあたって大切な判断軸は相対的マーケットシェアだと叩き込まれたことを思い出します。つまり、ビジネスを競っていく上で“シェア”が大切だと。

 

ですから、「“シェア”20%を超えれば、価格の決定権を持つプライスリーダーをとれる」とか、「競争地位が上がったんだから戦略も変えていかないと…」とか、「トップ企業の××製品から“シェア”を取れるように営業トークスクリプトを作れ」といったことを耳にされていた方も多いのではないでしょうか。

 

しかし、昨今、こういった視点で競争を繰り広げていたり、あるいは“シェア”を経営指標のKPIに据えている企業というのはごく少数でしょう。

 

その理由は、実に単純なことです。多種多様な顧客ニーズに対応して、各社がみな微妙に異なる市場で商売を展開しているからです。

 

つまり、市場そのものを定義しにくいため、そこでの“シェア”という概念自体が役に立たなくなっているのです。

 

例えば、IT企業といっても、技術がウリで受託開発を中心とした商売、エンジニアを派遣する商売、独自のアプリを開発する商売、サーバーを貸す商売、webショップを展開する商売、生産管理システムの商売、会計労務システムの商売、IT商材を販売する商売…、全く異なる商売です。

 

シェア競争というのは、市場のパイが伸びている局面、あるいはそもそも一定程度の市場があってこそ意味を持つものということです。

 

こういった異なる商売をIT企業と一括りにして“シェア”で比較することに何の意味もありません。

 

今のような、足りてる時代、顧客ニーズ多様化の時代、“シェア”云々というよりも、その市場自体の存続が危うい時代です。商売の在り方自体を「更新」しながら存在意義をお客様に問い続けていかなければなりません。

 

では、どのように「更新」していけばよいのか…。そのヒントが実は“シェア”にあります。

 

先ほど、「経営を伸ばしておられる経営者ほど、“シェア”という言葉を使わない傾向にある」とお伝えしました。それは、他社と違う商売をしているという創意工夫に対する自負の現れでもあります。

 

独自性に誇りを持つ経営者は、自分で考えた市場で商売を展開されているため、例え小さかったとしても「シェア100%」なのです。だから、“シェア”という言葉を使わないのです。

 

つまり、「更新」とは、自社がシェアでトップを獲れるように市場の境界線を引き直す独自の「切り口」を考えていくということです。無論、その「切り口」は、製品・サービスではなく顧客視点であることは言うまでもありません。

 

シェア100%の市場の定義を拡げながら「更新」することで売上利益を拡大する。市場の定義を拡大するから売上利益が伸びる。自分で拡げる…、この順番が大切です。

 

社会的要請や顕在化した他人が作った市場に便乗して“シェア”を拡大して売上利益を伸ばす成長と、自社で考えた独自の市場でトップにありながら売上利益を伸ばす成長では、成長構造の根本が違うということを意識しておくことが大切です。

 

御社の「市場」は他人が作ったものですか、自社で創ったものですか?

製品・サービスではなく顧客視点で市場の定義を「更新」していますか?

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