【第197話】成功イメージによって異なる資金調達法と判断軸

「ご要望の金額の“倍”お出ししますので、もっと早く事業を成長させませんか」。新事業の資金調達にあたり、ベンチャーキャピタルにプレゼンした際のマネージャーのコメント。

 

新事業の立ち上げにあたって、当然のことながら資金調達は必要不可欠な検討事項です。経営者にとって様々な利害関係者がいる中、最も影響力があるのは常に顧客です。しかし、こと新事業の立ち上げとなれば、銀行や出資者といった資金提供者へ対応する場面というのは、場合によっては新事業をやれるか否かに関わることだけにシビれる瞬間です。

 

それはさておき、「新事業に銀行がおカネを貸してくれなくて…」といったことをお話される経営者がいらっしゃいます。こういった方々にお返しできるのは、「世の中には資金が溢れています」という情報提供くらいです。

 

銀行に行けばホイホイとおカネを貸してくれると思っているのでしょうか。事業経営者として大切な第一ボタンをかけ違えています。

 

事業を成り立たせるというのは、その採算を成立させることに他なりません。立派な大義も理念も、採算を成り立たせる実務を伴ってこそはじめて事業家なのです。

 

融資を断るということは、銀行の立場からすれば「売ってください」というお客様を目の前にして、「売らない」と言っているのです。その判断に理由がない訳がありません。

 

「銀行はおカネを貸すのが仕事だろ」…でしょうか。いえいえそれ違います。「銀行はおカネを貸して金利を付けて返してもらうのが仕事」です。

 

「銀行はリスクを取らない」と聞くこともあります。そのとおりです。なぜならば、そもそも銀行はリスクを取るための機関ではないからです。

 

逆に考えるならば、融資に関して担保や経営者保証を求められていることがその証拠です。貸し借りは契約という名の約束で、守ることが前提ということです。「約束が守られそうにないから約束できない」。銀行はそう言っているだけです。

 

金融機関の方々もプロなのです。事業計画書のサマリーページ、経営者と決算書を見れば、大方の判断は着いているものです。

 

プロ相手にその場しのぎが通用するほど甘い世界ではありません。その時々のご時世や政策動向もあろうかと思いますが、先方も商売なのです。

 

ちなみに、商売からの儲けと減価償却とは別に、追加的に資金を調達しようとすれば、大きく2つの方法しかありません。それは、「融資」と「出資」です。

 

「融資」はおカネを借りることです。お借りしたおカネに、通常は金利を付けてお返しします。そして、「出資」は発行する株式におカネを出してもらって利益がでた場合に配当として還元します。事業が上手くいかなければ出資金がパアになることもあり得ますが、上手くいけばその株式は出資時よりも高値になることが期待できます。

 

なぜ、こんな基本的なことが重要なのか…、といえばそのスキームの本質まで理解されている方が少ないからです。

 

それは、「融資」はリスクを許容せず、「出資」はリスクを選好しているということです。要は資金調達法としての根本的な役割が違うのです。

 

だとすれば、銀行に行って話すべきは、金利以上にリスクがないことですし、ベンチャーキャピタルに話すべきは、リスク以上にリターンが見込めることなはずです。

 

ところが不思議なもので、なぜか銀行に「リスクはあるが将来性に賭けてみたい…」といった自分都合を語ってしまったり、ベンチャーキャピタルに「確実です」などと言ってしまうのが心情というものです。

 

どんな成功を手に入れたいのか、どんな未来を描いているのか、どんな事業なのかによって資金調達法も変えていかなければなりません。その判断軸になるのが「リスク」だということです。

 

いずれにしても、中小・ベンチャー企業が資金を調達するにあたっては、「儲けて実績を創る」ことが欠かせません。まずはリスクに対してリターンを最大化できる“社長脳”が大切です。

 

新事業のリスクを見積もれていますか?

リスクの取り方、資金調達法はご自身の成功イメージと合致していますか?

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