【第175話】投資を成功させるリスクとおカネの見積り方

「仕入れた在庫が余っていて…」、「製造した製品在庫が〇千万ほどあるんです…」、「投資した設備の仕事が減っていて…」といったお話を、経営の現場でよく耳にします。

 

経営はいい時もあれば悪い時もあるものです。長い目で見れば、いい状態ばかり…などということは絶対にありません。ですから、こういった時こそ、経営者としての度量や才覚が試されているのだと、心して事に当たっていくことが肝要です。

 

前述のよく聞くお話、これらは現金化までの時間の長短はあれど、すべて「投資」の失敗です。投資資金を現金化して回収できない…ということです。

 

大切なことなので改めてお伝えしますが、弊社では常々「経営とは投資である」と申し上げています。すなわち「先におカネが手元から離れて後から帰ってくる」という構図にあるということです。

 

この裏を返せば、「投資」したけど、それが現金化できない…、これが経営行き詰まりの根本原因ということです。

 

よく、販売不振が経営行き詰まりの原因とされることがありますが、これは症状にすぎません。販売不振というのは、投資資金を現金化して回収できないということであって、根本の原因を突き詰めていけば、販売以前の行為、要は投資時点にその原因があるのです。

 

経営の難しさというのは、「投資」しなければ失敗もしない――、ということが分かっていても、経営を維持発展させていくためには「投資」し続けていかなければならないということです。

 

経営者である以上、「投資」が仕事なのです。だからこそ、「投資」した後に尻拭い的に頑張るのか、「投資」時点で頑張って後から楽をするのか…、「投資」にあたっては経営者の意識差が大いに現れます。

 

誰も失敗したいと思って「投資」する人はいませんから、「投資」にあたって、どういったことを考えていけばよいのかということです。「投資」のリスクは二つの見方ができます。

 

まず、最初は当然のことながら、「投資を現金化できるか、回収できるかというリスク」です。投資した金額に対して返ってくるおカネの量が釣り合うかどうか…、いわゆる「量」の問題で、投資のリータン、利回りということです。

 

そして、もう一つの見方が「時間」です。投資資金がどのくらいの時間で回収できるのか…、ということです。

 

投資回収までの時間が長くなれば、それだけ世の中も変わりますから、投資回収できないというリスクが高まります。では「時間」でどのくらいリスクが増すのでしょうか?

 

おカネの科学の世界では、キャッシュフローなどの不確実性を「ボラティリティ」と呼びます。そして、このボラティリティは時間の平方根として関数で表されます。

 

つまり、1年で投資回収できる事業のリスクを1とすれば、投資回収に2年を要する事業のリスクは1.4、3年なら1.7、5年なら2.2、7年なら2.6、10年なら3.2だけリスクが高いということです。

 

投資回収に10年を要する事業というのは、1年で回収できる事業の3.2倍、投資を回収できないリスクがあるということです。ですから、このリスク分を考慮してもなお十分に儲かる事業に仕上げておくことが欠かせません。

 

「投資」にあたっては、まずは資金の出入り「量」の視点で儲かるように準備することが前提です。そして、投資回収期間のリスクに応じて利益性を高めた上で事業をスタートさせることが重要です。投資回収に10年かかる事業であれば、1年で投資回収できる事業の3.2倍程、儲かる事業プランに仕上げておくことが一つの目安といえます。

 

多くの企業が、過去の「投資」をなかなか回収できずに苦しんでいます。回収できないだけなら手持ちの資金が減るだけですが、それが借金であったならば借金を返すために働き続けなければなりません。

 

資産のインフレが期待できない今、借金で投資して稼ぎながら返すという旧来的な借入先行投資サイクルではなく、先に儲けてその資金を再投資するという利益再投資サイクルを主軸に据えることをおススメしています。

 

その投資の回収期間は何年の予定ですか?

投資回収期間のリスクに応じた儲かり具合に仕上がっていますか?

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