【第147話】賢く“設備投資”を進める投資採算の考え方

経営とは、すごく単純化して考えれば“投資”です。先におカネが手元から離れて、それが素となっておカネが返ってきます。

 

そのおカネが、投資した額よりも大きければ投資はプラスで成功、小さければ投資はマイナスで失敗です。

 

例えば、商品を仕入れて値入れして販売できればその差額分だけプラスとなりますが、仮に売れなかったとしたら、仕入額の分だけマイナスになってしまいます。

 

このような仕入れ・在庫・販売…といった商売上の循環ならば、投資から回収までにそれほどの期間を要することはありません。

 

ところが、“設備投資”となると、投資から回収までの期間は5年、10年、30年…、著しく長くなります。

 

社長の仕事は決めることです。つまり、やるのかやらないのか…を判断していくということです。そういった決めることの中で、特に難しいのが“設備投資”の決定です。

 

その難しさは、その決定が影響を及ぼす期間が長いからです。お客様の事情や世の中の構造は変わっていきます。長期にわたる読みが当たれば幸いですが、影響期間が長くなってくれば、外れる確率も高くなってくるということです。

 

もう一つ、“設備投資”の難しさは、決定して一旦実行してしまえば、それを簡単に元に戻すことができないという点です。

 

株式投資のようなものであれば損切りしてすぐに売ることもできますが、使用している設備を止めて手放すことが難しかったり、仮に売れたとしても二束三文にしかならないと考えておくべきでしょう。

 

“設備投資”は実行するのが大変と思われがちですが、途中でやめるのはもっと大変です。一旦行ってしまうと、そのポジションを簡単には解消できないのです。

 

だとしても、成長発展を目指すならばその基盤となる“設備投資”に果敢に挑戦していかなければなりません。

 

工場、建物、生産設備、店舗…、“設備投資”を行って、その投資からリターンを得ていく。そしてこの資金を再投資することでより一層成長していく。これこそが、成長発展の王道です。

 

では、投資成功を目指すには、どうしていけばよいのでしょうか。まず、よく理解しておかなければならないのは、「投資とはマイナスからスタートすること」だということです。

 

例えば、“設備投資”をとても単純化して減価償却や法人税がない状況で考えてみましょう。

 

まず、“設備投資”5千万円でお店を建てたとします。するとマイナス5千万円からスタートということです。

 

初年度1億円の売上で2千万円の利益が出たとしましょう。この2千万円は利益のように見えますが、初期投資の5千万円のうち2千万円を回収したにすぎません。次の年も2千万円の利益が出たとすると累計で4千万円を回収したことになります。

 

そして、その次の年も同様の利益水準となったならば、初期の“設備投資”の5千万円を毎年2千万円のペースで回収することになり、2.5年で投資を回収したことになります。

 

それ以降、つまり投資回収以降に生まれた利益こそが、本当にその投資から生まれた利益ということです。投資に対する見返りとしてのリターンという訳です。

 

大切なことなので繰り返しますが、投資回収が終わっていない間の利益というのは、「単に過去の投資を回収しているだけ」のことであって、その見せかけの利益を「儲かっている」などと勘違いしないことがとても大切です。

 

この利益は、企業の会計が法の定めによって1年を超えることができないため単年度の利益を確定させているだけであって、経営者であるならば、投資単位でその期間を一つの採算単位として理解しておかなければなりません。

 

御社の“設備投資”の回収はどの程度進んでいますか?

単年度の利益に翻弄されることなく、投資単位で採算に乗せていますか?

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