【第141話】売れる“コンセプト”創りの進め方

仕事柄、事業のこれからについて見解を求められることがあります。

 

「〇〇の業界では、△△という状況があって、これを□□するビジネスを展開していきたいのですが、どうでしょうか?」といった具合です。

 

そういった時には、せっかくのご縁ですので、やり方・方法レベルの論点はさておいて、商売の核となる提供価値、お客様ニーズの捉え方についてだけ、簡単にコメントさせていただくようにしています。

 

当然のことながら、商売は売れなければお話になりません。売れたからといって儲かる訳ではないところが、商売の難しいところなのですが、ここではその話はまず置いておいて、売れなければお話にならないという、「そもそも論」について考えてみましょう。

 

とてもとても単純なことなのですが、売れるためには売れる理由が必要です。売れる理由とは、お客様が欲しいと思うポイントを、売り手側が予め設計し、発信できているか…ということです。

 

そんなこと分かってる…。その通りで、これがまあ「言うは易し行うは難し」な訳です。

 

まず、「売れる理由」づくりが難しいのは、結果的にそれがとても“複合的”だということです。

 

例えば、いきつけの定食屋さんのことを説明しようとすると、「豚の生姜焼きが濃い目の味付けで絶品。ご飯とキャベツが満足盛りなのに、お値段はお手頃。そして、なんといっても料理しているオジちゃんが真剣だし、オバちゃんの心配りが良いんだな~。そうそう、付け合わせの自家製タクワンも好きだな」なんて長ったらしいことになる訳です。

 

このように、結果としていくつかの要素が複合的になっているのですが、この繁盛している定食屋さんに聞いてみれば、「そうだね~、ウチの定食は“毎日食べても飽きない実家のご飯”みたいなもんかね~」と、あっさりと“コンセプト”レベルでお話されます。

 

売れるお店は、長年の商売を通じて知らず知らずのうちに「考え方」が出来上がっています。

 

「売れる理由」は、結果としていくつもの要素から成り立っていますが、その要素、要素は単に個々個別に想いついたものではなくて、一つの考え方、すなわち“コンセプト”の下で、展開されていることで“強さ”を宿します。

 

つまり、複数の要素が、一つのコンセプトの下で展開されていると、とても強い「売れる理由」が完成するのです。

 

ところが、それぞれの要素が、思い付きでバラバラだったならば――、お客様にとって、売れる理由には、残念ながらならなりません。

 

例えば、旅館。浴衣を選べます、好きなシャンプー使えます、湯上りに一杯ビールサービスします、部屋食にできます、地元素材の料理、お風呂は……、といった具合に、個々個別の取組みには努力が見られたとします。

 

ですが、これらは強い「売れる理由」にはなりません。こういった個々個別の取組による提案は、お客様から見れば単なる「購入時の契約条件提示」でしかないからです。

 

個々個別の取組みが展開される全体の核となる部分がなければ、それら一つ一つの取組はバラバラのままで本質的な「売れる理由」を形成しないのです。

 

大切なことなので繰り返しますが、個々個別の取組みを「売れる理由」に昇華させるためには、核となる“コンセプト”が欠かせません。

 

ところが、“コンセプト”創りはとても難しい。その理由は、“コンセプト”とは経営者自身の価値観、考え方だからです。自身の考え方をハッキリさせることには勇気がいるし、何を目指しているのか……、自分でも良く分からない…。

 

であるならば、だからこそ“コンセプト”を創ることを決める必要があるのです。

 

御社の提案は、単なる「条件提示」になってしまっていませんか?

核となる考え方、すなわち“コンセプト”を創ろうと決めていますか?

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